もしもこの世に神様がいるなら、私のちっぽけな願い事くらい聞いてほしい。好きな人と結ばれたい、ただ、それだけの願い事だ。あんなチューリップ頭に片想いを続ける毎日は正直もううんざりだ。周りにいる恋人たちのように手を繋いでみたいとか、触れてみたいとか、まだ進んでもいないのに私の頭は次の段階に上がってしまっている。もしも神様がいるなら、私のお願いを聞いてほしい。
「風介ー!」
呼ばれて振り返れば赤い髪にどきりとした。けどよく見れば晴矢ではなく、ヒロトだった。残念、私は何を期待していたのだろう。それと少しヒロトに失礼だから、心の中で謝った。何だ?と首をかしげたらヒロトは私の頭を撫でた。一人じゃ危険だから、一緒に帰ろう。もう私の家はすぐそこなのに、過保護なのは変わらない。そのまま一緒にヒロトと歩いて、私の家の前まで着いた。
「ありがとうヒロト、それじゃ」
「風介、」
いつもと違う真剣な顔つきで、ヒロトは私の肩を掴んだ。どうした、と見つめれば、抱きしめられた。ヒロトに抱きしめられるのは初めてで、それに暖かかった。
「俺に……しない?」
わかってはいた、ヒロトは私のことを想っていると。けど私はヒロトの純粋な想いを受け取ることは出来ない。私はあいつが、晴矢が好きだから。それもヒロトは承知の上で、私を応援してくれていた。きっと気持ちを押さえきれなくなったんだ、私みたいに。ごめん、ヒロト。耳元で呟いて、それをヒロトが聞きとった。わかってるよ、ごめんね。ヒロトは頷いて私から離れた。
「引き止めて悪かった、じゃあまた、明日学校でね」
「あぁ……また明日」
ヒロトの作り笑いは何度も見てきた。やめればいい、私なんか、私なんかを好きになるからヒロトはつらいんだ。それでも諦めれない気持ちは、私にもわかる。私も晴矢が忘れれないから。ポケットから鍵を取り出して玄関を開けた。そのまま階段を登り自分の部屋に入った。慣れた手つきで電気を付けて鞄を机に置いた。
「おかえり、遅かったね」
私しかいない部屋に声が響いた。驚いて振り返ったら長髪で、金髪の、羽が生えた天使がいた。しかもベッドにのうのうと座っている。
「何を驚いているんだい?キミが呼んだんだろう?ほら、こっちに来て」
「ちょっ、やめ」
「キミのお願いを聞いてあげる」
手首を引っ張られてベッドに押し倒された。知らない、誰だこいつ。慌てて起き上がれば馬乗りになって唇を奪われた。近くで見ると綺麗で、私は目を見開いたままだった。舌を絡められた気持ち悪さに私は上に乗る奴を突き飛ばした。そしたら羽根が舞った。初めてのキスを見知らぬ奴に奪われて気分が悪い。唇を急いで拭き部屋から出て行こうとしたら入口を阻まれた。
「僕はキミのために来たんだよ?キミの願い事を叶えにきたんだ」
私のもとにやって来たのは、私が祈り続けた神様だと言うのか。信じられなくて腰を抜かせば、私に近づいて頬を撫でた。もちろん代償はあるよ、とこいつ怪しくは囁いた。

10.08.11
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