家の中でくつろぐ鬱陶しい犬を蹴り飛ばした。ギャンと声をあげて私を見ては馬鹿の一つ覚えに尻尾を振る。犬は頭がいいのか悪いのかわからない。だけど多分、私の家で飼っている犬は頭が弱いだろう。食っては寝て、無駄にうるさく吠えては部屋を暴れて運動する。ヒロトには懐くくせに私にはなかなか懐かない。貴様を選んだのは私だぞ、恩を知らないのかこの馬鹿犬は。ムカついて相手にしなかったら強引に上に乗って顔を舐めてくるから弾き飛ばした。
「なんなんだこのクソ犬!」
これだから犬は嫌いなんだ。そもそも犬より私は猫を飼いたかったんだ。全部ヒロトの所為だ。あいつ、いつになったら帰ってくるんだ。バイトで帰りが遅いのはわかるが、円堂といちゃついて丸一日帰って来なかった日は蹴り飛ばした。むしろノーザンインパクト。だから最近は私がこのクソ犬の世話をしなければならなくなった。正直めんどくさい。だいたいヒロトの知り合いの研崎とやらがいろんな犬を飼ってるから譲ってくれたのは有り難いが、いや有り難くはないが、そろそろ突き返したくなる。何しろその研崎が私にこのクソ犬をお薦めしては性欲が大変大きいだのとほざいたから鳩尾を蹴り上げた。無論その研崎はうずくまって起きなかった。しかも赤い犬の次はミルク色した犬をお薦めしてきた。勿論うずくまっていたから顔色は見えなかったが私は両方いらんと吐き捨てた。私が欲しいのは猫なんだ、と言えば用意しておきますと小さな声が下から聞こえた。それに頷いたはいいがやはり赤い犬を押し付けられてその日は終わった。
「体調にはお気をつけて下さい。欲求不満になると飼い主を襲いますからね」
「ならいらん」
「でも涼野さまは赤いモノに惹かれるようですが?」
何故か余裕の表情の研崎がムカついたから顎を蹴って適当に犬の首を掴んで引きずった。これっきりだ、と自分で叫んだ気がする。
「欲求不満」
昨日の出来事を振り返っていたら耳元でぼそりと囁かれた。欲求不満、それは昨日の研崎が言っていた、飼い主を襲うと。そんな馬鹿な話がある訳がない。暗転、見上げれば白い天井に見知らぬ男。私は床に押さえ付けられていた。
「だ……誰だ、」
「だから欲求不満」
「何……え、おまえ、まさか」
「最初の蹴りは効いたぜ、飼い主サンよ」
「クソ犬……?」
にやりと目の前の男が笑うと前歯がギラリと尖っていた。赤い髪に耳に尻尾。間違いない、鬱陶しく思ったクソ犬だ。しかしどういうことだ、欲求不満になれば飼い主を襲う?研崎め、何故人間になると言わなかったんだ。これじゃあ完璧に私は、

「俺、性欲強ぇからな?」

喰われる。






--20100705

南雲が犬化
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