なかなか寝付けなくて布団から出た。そのままベッドの上でぼうっとしていたらカタ、と扉の奥から音がしてキシキシと誰かが廊下を歩いている気配がした。晴矢かヒロトのどちらかだろう。扉を開けて顔を覗かしたけど真っ暗で何も見えなかった。ひたひたと足を忍ばせながら明かりが漏れる場所に近付いた。洗面所に向かうヒロトの後ろ姿に嫌な予感がした。
「何……してるんだ」
「はは、……あははっ」
顔を水で洗っていたのか前髪が濡れていた。洗面所の台に置かれているビニール袋を見てわかった。ヒロトは定まらない目で私をとらえ、おかしそう高笑いをし始めた。
「……いつからだ」
「結構前からだよ?風介もやる?頭がパーッとなってすっきりするよ?それでね、円堂くんが俺の傍で笑ってくれるんだよ?ほら、風介もやってみなよ」
「いらない」
ヒロトが差し出した袋を叩き落としてそれを踏みつけた。
「二度とするな!」
「……どうして?すごく気持ちいいんだよ?」
「おまえ……おかしいぞ」
「おかしい?俺が?……そんなことないよ、ねえ、なんで逃げるの?」
洗面所から出ようとすればヒロトが私の手首を掴んだ。くすくす笑いながら私を見つめた。気持ち悪い笑い方だ。何をしでかすかわからないから恐怖が身体を強ばらせた。
「円堂くんもかわいいけど……風介も泣かせたくなるよね」
「っ!」
く、と喉元を指の腹で押されて息が止まった。ヒロトの目が細まる。足が固まって動けなかった。するすると首筋に手を伸ばすとヒロトはまた笑う。何をされるかはすぐにわかった。ヒロトの手に力が入り私の首を締める。ひゅ、と息が詰まって口が開いた。
「ぁ、く……」
「あはは!かわいいよほらもっと泣いて?君の歪む顔、だいすきだよ!」
「ひ……ぁ゛」
ヒロトの力は緩まずに私を苦しめてきた。顎に唾液が垂れて目が霞んでくる。涙が流れた。ヒロトが本当に怖いと思った。私の指が震えて、私の瞳はヒロトを映した。ヒロトはやっぱり笑ってた。



首筋に罪の花を咲かせて






20100625
※薬物を勧めている訳ではありません。あくまで話のネタとして使っています。
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