雷門に涼野風介として潜入した私はこの生ぬるい雰囲気に溶け込んでしまっていた。配られたおにぎりをはむはむと食べていたら隣で綱海が腰をおろした。目が合えばにっと笑みを見せる。
「そろそろ慣れて来たんじゃねえの?」
「何が」
「このチームだよ。円堂は熱いし、豪炎寺は強いし、鬼道は頭いいし」
「フ……君の言うことはいちいちガキ臭い」
「お、おいおい!涼野もガキだろ?」
「君と一緒にするな」
「それと、俺は綱海だ!つなみ!つーなーみー!」
「ああもううるさいッ」
耳元で叫ばれるから頭に響く。手で抑えれば綱海がぐっと顔を近付けてきて私は驚いて後退りをした。だけど綱海はじゃれるように私に食い付いてきて、脚を身体で割って距離を縮めた。
「な?綱海って言ってくれよ」
「何故私が……」
「おまえ、気付いてないけどチームの奴の名前一言も呼んだことないんだぜ?」
真剣に見つめてくるからついひるんでしまう。私がおまえらの名前を?冗談じゃない、ただの偵察に来た私に、何も知らないおまえが首を突っ込むことではない。だいたい名前なんてどうでもいいじゃないか、私にだってチームがいる。
「い、いから離れろ……!」
「お、おい!言ってくれよ!」
「うるさいッ」
「俺はすきなんだぜ!?円堂も、チームのみんなも!もっと仲良くやろうぜ?」
「なっ……」
なんて適当でまっすぐな奴なんだ。肩を掴まれてうるさいくらい振られた。大方、孤立している私をほおっておけない兄貴肌なんだろう。
「わかった……わかったから離れてくれ」
唇を尖らせて渋々私の上から退いた綱海は男座りでまた私を見る。視線をさ迷いながらも私は居心地の悪さにため息をついた。仲間なんて言っても、私の場合はほんの一瞬だ。きっとそろそろ、父さんからの命令がくる。戻って来いと。
「おまえは仲間としてもすきだし、なんか……守ってやりたいなって思う時だってあるぜ」
「あいにく、私は同性に守ってもらうほど柔ではない」
「そうなのか?」
「あ、当たり前だ!」
「だってホラ、」
すると綱海は私の手を引いて抱き寄せた。胸がドキッと弾んだ。綱海の胸板に私の頬が当たり、とくとくと綱海の鼓動が鮮明に聞こえた。こんなに華奢なんだぞ?って笑いながら私の背中を叩いた。
「なら……か、勝手に、……守ればいい」
「ああ、そうさせてもらうぜ」
ああもう、こんなことされたら余計にこのチームから抜けれなくなってしまう。でももう時間はないんだ、だから、この暖かい胸で気持ちを落ち着かせよう。そしたらまた、いつも通りの私がいる。



ほんの少し好きだったよ



20100515

気付かないうちに攻める綱海はあはあ^p^
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