登校中にたまたま見かけた南雲と涼野はちゃっかり手を繋いでいた。え、と固まっているとよく見れば南雲が眠たそうな涼野を引っ張っているだけだった。頭ではほっとして納得している自分が居たけど、内心では何故かもやもやと俺の胸に違和感があった。
「おはよう涼野」
「ああ、風丸。おはよう」
用具を取り出して机の中にしまい、涼野は携帯を手にとり画面と向き合っていた。隣の席に着いて涼野の指の動きを追った。細い指先、でも触れたら冷たいんじゃないんだろうか。だんだんそんな疑問や幻想を頭で考えていたら本当に触れたくなってしまう。伸ばした手は涼野の指先に触れた。あれ、意外と暖かい。
「風丸?」
俺を見た涼野に優しく笑いかけて、指先を絡ませた。恋人繋ぎをした俺達の手にはぬくもりがある。それに気付いた涼野が一瞬で顔を赤くした。
「な、何……」
「あ、ご、ごめん」
涼野の照れた顔にこっちまで恥ずかしくなってきて手を引っ込めた。暖かさは去って、空気がひんやりと冷たかった。
「頭でも打ったの?」
「はは、そうみたいだな」
手を繋いでみたかったなんて、きっと頭でも打ったんだろう。涼野が呆れたように苦笑いをしたから頭を掻いた。ああでも、やっぱり繋げたことに俺の胸が弾んでいた。喜んでいいのだろうか、これは。
「涼野、トイレに行こうぜ」
「は?」
手首をつかんで涼野を引っ張った。トイレに行きたいなんて思ってなかったけど、なんだか涼野に触れていると気分がいい。もしかしなくても、涼野が好きなんだろうな。教室を出て廊下を駆けた。トイレを通り過ぎれば涼野が意味がわからないと叫びながら俺について来る。自慢の陸上で鍛えた俺の足に涼野はついて来られるから凄いものだ。
「トイレ過ぎたぞ、風丸!」
「いいんだよ!」
「何処が!」
走りながら叫んで、たどり着いたのは中庭だった。息の荒い涼野は困ったように眉を垂らして地面に尻を着いた。
「俺さ、涼野がすきみたい」
「だ、だから何でこんな場所で……」
「すきな人と仲良く走りたかったのかな。俺、陸上部だしさ」
「……そう」
疲れてるみたいで俺の告白は流されたけれど、悪い気分ではなかった。涼野と手を繋いで走る南雲がうらやましかっただけかもしれない。やっぱり走ることは、楽しい。



手を繋ぎたい理由



20100514

で、風丸はなにが
したかったの?^p^w
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