ちゅ、と風介の唇に優しく触れて離れた。まっすぐに俺を見つめる風介を目で微笑む。
「ん……ヒロト」
「しっ、黙って」
また風介の下唇を奪って吸い付いた。壁に両手を絡ませて押さえて、風介も俺に応えるように長い睫毛を伏せた。フレンチなキス、甘くて柔らかい風介の唇は俺の欲を駆り立てた。
「……は、ン」
「風介、君が好きなのは?」
「わかって、る。ヒロト」
繋ぐ手の力を込めて俺に巻き付いた。吸い付く俺の唇に風介がはむ、と噛み付く。それに応えて風介の口元を舌でなぞり舐めた。ふるりと震えて俺を見上げる。
「……私は、」
「大丈夫だよ。風介には俺が居るから」
「ヒロト、……すき」
「うん、俺もすきだよ」
渡したくない、かわいがってきた風介を簡単に晴矢に譲るなんて、俺はそこまで優しくないんだ。風介がいきなり俺に言って来た。晴矢と居ると胸がきゅってして、暖かいと。憎かった。俺は風介の恋愛対象に入っていないことも、風介の心を奪ったことも。だから俺が提案した。恋愛について身体で教えてあげる、と。だけど風介は覚えがよかったし、頭もよく回る。俺の教えに疑問を持ち始めたのはそう遅くはなかった。
「私はヒロトがすきだ……なのに晴矢と居るとつらい」
「そう……大丈夫、つらくなったら俺のところにおいで、慰めてあげる」
それに頷いて風介はまた瞼を伏せた。艶のある唇に俺の唇がかぶさる。風介は、晴矢が好きだ。風介もきっと気付いてる、だからこそ俺から離れれないんだ。傷付けてしまうと恐れてる、そんな風介の些細な優しさが俺を支えてる。触れるだけの、絡みつくような暖かいキスは風介の冷気に消えていった。
「恋心を抱いていいのは俺だけだよ」
頬に唇を寄せて軽くキスをして、風介のまくし立てて丸見えの二の腕に噛み付くように甘く触れた。吸い付いて舌で舐め上げて、赤い痣がやんわりと風介の肌に浮かんだ。
「ヒロト、今度もまた、慰めて」
「うん、任せてよ」
風介が言うなら、何度だって慰めるつもりさ。晴矢には悪いけど、渡したくないんだ。これが俺の小さな対抗。



気付いちゃいけないよ



20100514
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