勢いで逃げ出した為に私は周りとは浮いた格好だった。ここは雷門イレブンの練習グラウンドだ。知らない顔ばかりがサッカーボールを蹴っている。大きな声を出しているのが円堂守か、グランの所為で覚えてしまった。そして私が知りたいのはあの長髪の彼だ。やっぱりかっこいい。名前が知りたい、もっと近くで見てみたい。
「何してるんですか?」
「!?だ、誰だ!」
彼に夢中で警戒していなかった私は後ろから来た人物に気付けなかった。私が慌てて振り返れば、その女はぱちぱちとまばたきをして私を不思議そうに見る。私がエイリア学園の者だと知らないから警戒心がないんだろう。
「もしかして雷門イレブンのファンですか?」
「え、ぁ、いや、わ、私は……」
「私?女の子……ですか?」
じろじろと私を見つめる女は掛けた眼鏡をくいと上げて怪しむように眉を寄せた。とりあえず全力で否定したら、ですよねーと笑われた。からかわれたのか、すごく恥ずかしい。
「君は雷門イレブンの仲間?」
「はい、マネージャーですよ。春奈って呼んでくださいね」
「彼の名前……わかる?」
「彼?」
グラウンドで走る彼を指差せば、春奈はああ、と声を出して風丸さんですか?と笑顔で私に言った。風丸とぼそぼそと呟けば、春奈は私の顔を覗きこんできた。驚いて後退れば、春奈はまた怪しむように私を見つめた。ばれたかもしれない。
「もしかして風丸さんのファンですか?」
「……え?ああ……そうだ」
顔を真っ赤にして言えば、春奈はくすくすと笑いだした。
「かわいいですね!えーっと……」
「涼野だ、涼野風介」
「涼野さん!よかったら雷門イレブンのマネージャーやってみます?私でよければお手伝いしますよ!」
「い、いいのか……!?」
おずおずと春奈を見れば、もちろんですと目を細められた。それから春奈に連れられて私は薄い水色のジャージをもらい、目立っていたこのエイリアのユニフォームを脱いで着替えた。
「似合ってますよ!涼野さん!」
「そうか……?でも、なんかサイズでかい気が……」
「大丈夫です!だぼだぼのジャージの方がかわいいですから!」
春奈に笑顔で説得されて私は渋々雷門イレブンのメンバーのところまで引きずられるように歩いていった。春奈がみんなにマネージャー希望者ですよ!と声を掛けるから私は恥ずかしくて堪らなかった。みんなの視線が私に集中する。
「へえ、男がマネージャーって珍しいな」
円堂守と一緒に駆け付けた風丸が私を見つめた。それだけで私の胸は破裂しそうな程にうるさかった。間近で見る彼は眩しかった。



20100619

風丸と対面よかったね!
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