「涼野、一緒に帰ろう」
変わらない笑顔で風丸に言われたが、今日は晴矢と帰るつもりだ。先客がいると断ったら風丸はしょんぼりと落ち込んでしまった。
「南雲か?家、近いもんな」
「まあ……それより頭の方は大丈夫なのか?」
「ああ、俺の不注意だったしな。それにぐっすり寝れたよ」
「そう、なら心配はないね」
すると後ろから緑川が顔を出して不思議そうに風丸を見る。この人は?と首を傾げた。
「同じクラスの風丸」
「へぇー……」
怪しげに風丸を見つめていたが風丸に手を差し出されよろしく、と言われたので緑川も人懐っこい笑顔で握手をしていた。
「よかったら途中まで行こう、涼野」
「そうだね」
風丸に続いて教室を出ようとすれば手を掴まれた。振り返れば緑川が不安そうにしていて、俺も一緒に、と言っていたが照美に止められた。
「君も職員室だろ?抜け駆けはダメだ」
「違っ、俺はただ涼野さんの虫除けを……」
また言い合い始める二人にため息をついてそのまま教室を出た。緑川が後ろで呼んでいたが、振り返らずに手を振った。なんて言ったのかは聞き取れなかったけれど。


「体育委員だったんだな。俺は環境委員でさ、掃除させられたよ」
「へえ、君が環境か……似合ってるじゃないか」
「涼野は似合わないな」
苦笑いする風丸に私も笑い返した。箒を持って掃除する風丸を想像してみれば案外しっくりくるものだ。廊下では下校する生徒達が行き来し、私達も昇降口に向かって歩いていた。
「涼野、好きな奴はいる?」
「え?いきなり何を……」
「いいから、」
「そうだね……気になる奴なら」
私が頬を緩めて笑えば、風丸は誰かわかったのか寂しそうに瞳を震わせて、そうかと小さく言った。そして今度はつまらなそうに眉を寄せた。何かまずいことを言ってしまったのかもしれない。
「最後に、聞きたかったんだけど……」
「最後?」
「聞かなきゃよかったかな……」
「風丸?」
俯いた風丸の表情を伺おうとすれば顔を背けられ謝られた。長い髪で風丸の顔が見れない。すると先に帰る、と風丸は行ってしまった。気になって後ろ姿を見ていたが、すぐに晴矢が来て私は風丸のことを考えるのはやめた。

「ああもう、むりだ」

鬱陶しく長い髪を束ねるゴムを取った。髪がさらさらと風に乗った。



20100502

闇丸…?笑
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