照美の所為でほぼ強制的に委員長になった私はいきなり仕事を任された。体育委員ごときに一体なんの仕事があるのかと思えば夏にある体育大会関係だ。私は書類の仕分けを頼まれ、今こうして溜りにたまった紙切れを右へ左へ分けていた。
「で、なんであんたがいるんだ?」
隣で私の仕事を手伝う緑川がプリントを置いて横目で照美を見る。照美は手伝う訳でもなく髪の毛をいじったり私たちの作業を眺めたり、ただの暇人だった。
「君に僕のポジションを奪われたからね、おかげで僕はただの委員だ」
「いやー残念だったね。でも一発で負けてくれるなんて思ってもみなかったなぁ」
緑川の挑発にぴくりと眉を上げた照美。私はそれを止めることなく黙って聞きながらプリントを仕分けた。もうすぐ終わるから、早く片付けて晴矢と帰ろう。
「緑川くん、君は僕の恋路を邪魔するのかい?」
「邪魔?俺はただ、バスでまた痴漢されないように見張ってあげようと思っただけ」
「痴漢?」
「いわゆる虫除けかなー」
「こ、この僕が虫!?」
「いやだなー別に虫だなんて言ってないし」
「神に対する侮辱だ!」
せっかく緑川が仕分けたプリントを照美が上から叩きつける。私は見ぬフリをして最後の仕分けを終わらせた。それに気付いた緑川も慌てて手に取る。私は手にしたプリントの束を照美に押しつけた。私の顔とプリントを交互に見て不思議そうにする。
「職員室まで運んで先生に渡せ」
「え、僕が?」
「私を委員長にした罰だ。私は帰る」
返事に困っている照美を無視して教室から出ようとすれば、緑川が駆け寄ってきた。どうしたと首を傾げれば笑顔で携帯の番号を聞かれた。仕方なく教えれば照美も割って入ってきた。ついでに照美にも教えた。
「明日の土曜日、よかったら出掛けようよ」
「いきなりだな」
「だって俺、涼野さんのこと好きだしー?」
「……は?」
唖然とする私に頭上で腕組みをする。照美も驚いていた。軽く笑うと緑川は私の肩に手を置いて頬に唇を付けた。いきなりのことにうまく反応できなかった。
「明日、楽しみだよ」
頬笑んだ緑川に私は小さく頷いた。隣では、あああ゛と照美が悶えていた。キスされた頬が暖かい。とりあえず早く帰ろうと扉を開こうとしたら勝手に開いた。
「あ、涼野」
教室の入り口でばったりと会ったのは風丸だった。もう帰ったと思っていたのに。意外そうに見ていたら、ようやく見つけた。と風丸はつぶやいた。



20100502
緑川ってナンパうまそう
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