「当てたこと、気になるのか?」
体育館の端でみんなから離れて練習をする不動に近寄れば、は?と馬鹿にしたように笑われた。その顔めがけて手にあるボールを投げ付けた。不動の顔面に見事ヒットした。
「テメ、……犯すぞ」
「ふざけるな馬鹿」
跳ね返ってきたボールを取って抱きかかえた。不動は私を睨み付けていたけど、私が横に座ったらすぐに呆れたようにため息をついた。
「慰めとか、俺いらねえから」
「フン」
そんなこと言いながら実は嬉しいに決まってる。私が立とうとすればズボンを掴んで離さないのだから。行くな、小さく横でつぶやかれたからつい笑ってしまった。
「みんな、お待たせ!」
風丸を保健室まで連れて行った円堂が笑顔で手を振りながら帰ってきた。私も尻が重い不動を引っ張ってみんなのもとへ向かった。風丸は保健室のベッドで眠っているらしいから安心だ。
あとでみんなで見に行ってあげようとヒロトが言う。ただ気になったのが円堂の歯切れの悪い返事だ。



「え、何……それ」
「……どういう意味だ」
授業が終わってすぐに私と吹雪を呼び出した照美は携帯の画面を私達に向けてほくそ笑んでいた。バラされたくなかったら僕のしもべになるんだね。画面にはアツヤが無理矢理私を組み敷いた姿が写っていた。最悪だ。
「そ、そんな……僕、」
明らかに動揺している吹雪を横目に私は照美を見た。目が合えばくすりと笑い目を細める。しもべだと?ふざけるな。気付いたら私は照美の顔面に平手打ちをしていた。パァンといい音が鳴った。尻餅を着いた照美を見下ろして消えろと吐き捨てる。私の瞳には驚いて目を見開く照美の姿があった。

「ど、どうするの?涼野くん……あんなことして」
吹雪と一緒に照美から逃げている途中、吹雪の不安な声があがった。少しずつ歩調を少なくして、走るのをやめた。
「……ごめんね。僕のせいだよね?僕が……」
「アツヤだろ?君が責任を感じることはない」
「ほんと、ごめんね……でも僕……嬉しかった」
「え?」
「だってたくさん涼野くんに触れたんだもの」
微笑んだ吹雪に私はあの時のことを思い出して恥ずかしくなってしまった。慌てて顔を逸らせば、吹雪は私の手を握った。

「好きだよ、」

心が揺れたのは言うまでもない。



20100427
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