「ここが俺の部屋だ。とにかく思いだすまでゆっくりしてろよ」
どうせすぐにパッと思い出すだろうと余裕ぶっこいていた。部屋に入った風介は頷くなり小さなくしゃみをした。そういえばずぶ濡れなことをすっかり忘れていた。適当にタンスから赤い半袖の服を取り出して風介の頭に投げた。
ぼふりと顔で受け止めた風介は顔から服をはがして俺を見つめる。ん?と首を傾げて見れば変わらぬ表情で見つめてくる。とりあえず沈黙。
「えーっと、どした?」
「綱海、……着れない」
「え?」
「だ、だから恥ずかしいから向こうむいてろ」
頬を染めて目を逸らす。思わぬかわいさにおお、と歓声をあげた。にやけてしまう口元に気を付けながら背中を向けた。ばさばさと濡れた服が床に落ちる音がする。それに気を取られていたら風介が弱々しく俺を呼んだ。
「綱海……悪いけど、服、変えてもいい?」
「お、おう」
タンスを開ける風介の背中を見ていたらむっと睨まれた。見るな、と目で言われたので慌てて見るのをやめた。細っこくて綺麗な背中をしているから頭に残ってしまった。
「いいよ、綱海」
振り返れば青い服を着た風介がいた。確かに赤じゃなくて青の方が風介には似合うな。それにしても俺のサイズだからブカブカだ。いや、でもかわいい。しかし長袖なんて暑くないのだろうか。
「あと、下着とズボンを貸して欲しい」
「おー……じゃあ俺のパンツ……いや、やっぱ買いに行くか」
「は?」
「とりあえずこれ履いてくれ」
「え、ちょっとこれ」
風介に俺の半ズボンを着させたけどやはり下に着くほどのブカブカだ。肩がはみ出て鎖骨が丸見えだ。本人はズボンを上げるのに必死だけどすぐにずり落ちる。困ったように眉を垂らしていた。
「この格好で外に出るなんて……」
「まあまあいーじゃんかよ、ほら行くぞ」
風介の手を引いて部屋を出たけど、風介が自分のズボンを踏んで後ろで転けた。するりと風介の手が俺から離れて床に落ちた。
「おーい、大丈夫か?」
「……君は人を振り回すのが得意だね」
「ん?そーかぁ?」
倒れる風介の腕を掴んで持ち上げると意外と軽々と上げれた。それに驚く暇もなく今度は風介が俺の服をつまんで引っ張った。俺達は市街地に向かった。



20100425
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