「さ、早くご飯食べてね」
未だ笑顔のままのヒロトが怖いが、私はヒロトの作った朝食を食べた。綱海はやはり気にしていないみたいでおいしそうに食べている。卵焼きもベーコンも、私好みの味でとてもおいしい。ただ、ヒロトの笑顔で食う気が失せた。
「綱海くんち、親は?」
「俺?親父は海外で仕事、母さんも仕事ばっかりだから帰ってくるのは昼前だな」
「じゃあご飯とか……一人?」
「ああ大丈夫だって、隣んち風介だし、よくお世話になってんだ」
「ふうん……いいなあ」
ヒロトがちらりと私を見て、すぐに視線を戻す。私は黙って口にご飯を詰め込んだ。朝食が終わったのは7時30分頃で、まだ時間に余裕があるのにヒロトは学校に行く支度をしろと言う。
どうやらバスで行くらしい。しかもこんなに早く学校に行くなんてめんどくさい。私と綱海は引きずられるように家を出てバス停に向かった。
「ああ、晴矢に連絡してない……」
「大丈夫!俺が連絡するよ」
バス停で待ちながら私と綱海は重い瞼でいた。ヒロトが携帯を出して晴矢にメールを打っている。何故か表情は緩やかだ。
私は誰かの視線を感じて顔を上げて周りを見回した。目が合った子は私を睨んでいるのか見ているのか、警戒するように私に視線を向けていた。制服は同じだが見たことはない。1年生だろうか、彼は眉を寄せてすぐにフイッと前を向いた。
時間通りに来たバスに乗ったが、まさかの朝ラッシュだ。帰りみたいに多くはないがこれじゃあ昨日と似たり寄ったりだ。綱海も慣れないのかそわそわして、私も隣で嫌な顔をした。ヒロトはやはりバス通学だからかどことなく慣れていた。
座ることが出来ないから立っていたら、ヒロトが後ろに立った。私が横目で見れば、ヒロトは楽しそうに目を細めた。まさか、こいつ。
「ずるいよ綱海くん、ねえ、俺にもさせて」
「な、貴様……」
綱海は立ちながら居眠りしてるし、いくら人が多いからってこんなことは嫌だ。私が逃げようとしたら手首を掴まれて、後ろから伸ばされたヒロトの手が私の股に触れた。
「ヒロト……やめ、!」
「おいおまえ!やっぱり!」
私の制止の声はある声にかき消された。先程の緑の髪をした子が私の股に伸びているヒロトの手首を掴んでいる。
「え?ちょっと、な、なんだい?」
さすがにヒロトも焦っていて、私も緑の彼を見れば、ギッと睨まれる。
「おまえ、昨日もこいつに痴漢されてただろ」
「……は?」
どうやら彼は、昨日と今日のヒロトの痴漢を目撃していたみたいだ。バスに乗る人達の視線が痛かった。



20100421
緑川さんろー^p^
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