血がにじむ指を私に向けて舐めて、なんて言われて素直に舐める訳がない。馬鹿か、と眉をひそめてヒロトを睨めば残念そうに唇を尖らした。
「ケチだなぁ」
「いいからはや、ぐっ」
指をいきなり人の口に突っ込んで笑顔のままとはいいご身分だ。私が噛み付くとヒロトは顔を歪めて、でも口から指を抜かないでヒロトは微笑む。それにぞくりと背筋が震えた。
「ん、ん゛ッ!」
ガタッとテーブルからお椀が落ちて、私は床に倒れ込むようにヒロトに馬乗りにされた。未だ口から指を引き抜かないヒロトを睨んだ。手首を掴んで無理矢理口から指を離した。
ようやく口が空いたと思ったらヒロトの唇が降りてきてすぐに捕まった。ちゅる、と口内を舐めたヒロトは嬉しそうに目を細める。対に私は目を見開いた。
「ふ、んぁ」
ヒロトから逃げようと手を伸ばしたら指先を絡めて床に戻された。舌使いがだんだん激しくなってきて、私の逃げる舌を捕まえようとヒロトは丁寧に追ってくる。びくびくと震えて、瞑っていた目を開けたら真上には綱海がいた。
「おい、人の家で何してんだよおまえら」
綱海がヒロトを引き剥がしてぶつくさしている。額には熱冷まシートが貼ってあって、ヒロトが看病をしていたのがわかった。だいぶ熱がよくなったのか、まだ千鳥足気味だったが綱海は落ちているお椀を見て、げっと顔をしかめていた。
「おまえらなぁー……せめてお粥作っててくれよ」
「す、すまない綱海。私がへたくそで……」
「ていうか綱海くん、もう熱はいいの?」
「んーまあな、でもだるいから寝とく。部屋にお粥持って来てくれねえ?」
「ああ、わかった」
私が落ちたお椀を片付けていたら、ヒロトはてきぱきとお粥を作り出した。俺は大丈夫だから、綱海くん見ててね。と言われて渋々綱海の部屋に行った。
私だってお粥くらい作れるさ、多分。ふてくされて部屋に入れば、綱海はベッドに寝転んで眠っていた。
「綱海、寝たの?」
返事がないから寝たのか、私は扉を閉めてベッドにもたれた。綱海の寝顔を覗けばそれはもう幸せそうに、口を開けてよだれまで垂らしていた。額に貼られた熱冷まシートはすでにぬるくなっていた。綱海の寝顔を見ていたらこっちまで眠くなってきて、そのまま目を瞑った。



「お粥出来たよー……ああ、寝ちゃってる」



起きたら横にヒロトがいて、気付いたら3人でぐっすり眠っていたみたいだ。冷めたお粥が、懐かしかった。



20100419
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