いつもの穏やかな雰囲気とは違い獣のようなおっかない表情をした吹雪は、私の上に乗るなり手首を掴んで頭上で手の自由を奪った。床に散らばった教科書が激しく転倒したことを物語っている。
「吹雪、何を」
「ったく、士郎は甘えんだよ」
「……は、」
ぎち、と頭上で握られた手首が音を鳴らした。前に一度見たことがあるこの吹雪の変わりように、私は焦りを隠せないでいた。吹雪がにやりと口角を上げる。そんな仕草、絶対にしないのに。
「ちなみに俺は、アツヤだぜ」
「アツヤ……?」
すると小さい笑みをこぼしてアツヤはバッと胸元のワイシャツを引っ張った。私の身体が強ばると、アツヤはなるほどな、と目を細める。
「士郎が気になってたんだよ。あんたが胸元ばっかり触ってるから」
「っ、やめろ、吹雪」
「残念だなぁ?俺は吹雪だけどアツヤの方」
「ひ、ゃ」
首筋を舐められたから私は抵抗しようと腕に力を入れたけど、アツヤが体重を掛けて私を押さえているからびくともしない。吹雪なら、こんな力はない筈だ。次は目を伏せてキスを求めてきたから、私は咄嗟に顔を背けて拒絶する。
アツヤが上で舌打ちをすれば、べろりと耳を舌で舐められて私は唇を噛んだ。アツヤの舌が耳たぶから耳筋にかけて私の耳を犯していき、したくもないのに身体が震えた。
「や、ぁ、ひゃあ」
ピチャピチャと耳から音がなるほどしつこく舐められて、身体が熱を持ち掛けた時だった。


パシャ

「!!?」

アツヤと私が振り返った先には、携帯を向けてこの光景を楽しんでいる照美がいた。私達が固まったていたら、照美がまた携帯で写真を撮った。パシャリ、今度は完璧にアツヤの顔が写った。
「テメェ!!なに撮ってんだよ!」
「撮るも何も、授業に遅刻している君達を呼んでこいと言われてね。来てみたら廊下でこんなことを……フフ、いいものが見れたよ」
「こいつ、ふざけやがって……!」
私の手を解放した瞬間にアツヤは照美の胸ぐらを掴んで拳を作った。
「吹雪!!」
階段の上から聞こえた声に、アツヤの手が止まった。照美もチラリと目線を向け、私も見上げればそこには豪炎寺が立っていた。階段からゆっくり下りてくると、豪炎寺は吹雪の手首を掴み、照美との距離をとらせた。
照美が携帯をポケットにしまう。アツヤがそれを見て眉を上げると豪炎寺が落ち着かせるように肩を叩いた。
「アツヤ、少しは落ち着け」
「るせぇ!こいつ、盗撮しやがった!」
「今は冷静になれ。授業に戻るぞ」
「チッ……テメェ覚えとけよ!」
アツヤの気迫にびくともせずに照美は余裕の笑みで去って行った。それは私達の弱味を握ったからか、ますます照美という存在が私を悩ませた。



20100417
照美悪者…^p^;
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