訳がわからない、それだけだ。壁にぶつけた頭が未だずきずきする。晴矢は、怒ってる。
「これは戯れ合って出来ただけだよ」
そう言えば晴矢は私の首筋に指を通してなぞり、眉を寄せる。私もくすぐったくて身動いでいたら晴矢が首筋に噛み付いてきた。痛みに身体が飛び跳ねて、私は晴矢の頭を押し返した。
そしたら思い切り睨まれて、また噛み付いてくる。痛い、もういやだ晴矢なんて、乱暴すぎる。
「はる、や、やめろ」
「うっせえ」
「つう、く」
何度も何度も角度を変えて舐めたら、また噛み付いてくる。くしゃりと晴矢の髪の毛を掴んで抵抗したのに、チラリと目を向けられて終わった。くすぐったい、痛い、ぞくぞくする。訳がわからなくなって目尻に涙が溜まった。
「……あ」
晴矢の動きがピタリと止んだ。私が不思議に顔を上げれば、晴矢は申し訳なさそうに眉を垂らしていた。手を伸ばして私の涙を拭き取り、私を抱き締めた。
「わりぃ、泣く程いやだった?」
それに無言で首を横に振ると晴矢が私の背中を優しく叩いた。無理すんな、と言われたけど私はただどうしていいかわからなくて、晴矢に手を回した。




「涼野、風邪はもう大丈夫か?」
教室に入ってすぐ、風丸が私のところまで走ってきた。ヒロトが、風丸は私の為にのど飴をたくさん持ってきてくれたんだと教えてくれた。涼野の為だ、と言われてちょっとくすぐったい。
隣に居た晴矢は私の肩に手を置いて自分の席に向かった。晴矢は一時的な感情だけで私を押し倒したみたいだったけど、私の涙を見て晴矢は後悔していた。妬いてくれたのは嬉しかったけど、キスマークを消毒するように舐めたり、逆に自分の跡を付けるように噛み付いたりで、私はついていけなかった。
「ほら涼野、飴」
「ん」
風丸に受け取った飴を取り出そうとしていたら、風丸が私の耳元で囁いた。また口移しであげようか?なんて言われて私は慌てて風丸から距離をとった。風丸はくすりと笑うと、何かに気付いた。
「あれ、涼野、胸元のボタンちぎれてるぞ」
「ああ……それは」
晴矢に乱暴に壊されたから、なんて言える訳がない。だから転けてボタンが外れた、と嘘をついた。そしたら風丸は笑いながら、ドジだな。と見事に騙されてくれて、私は首筋にそっと触れた。未だ残る晴矢の熱にドキドキしながら。



20100416
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