「お兄ちゃん!」
俺のところに走ってくる春奈を笑顔で見ると、春奈は目をキラキラさせて前で手を組んだ。
「佐久間って人、凄いかっこいいね!恋、発見!」
お兄ちゃんが隣の席で良かった!と喜ぶ春奈に、俺の顔からは笑顔が消えた。妹の春奈に好きな人が出来たのが悲しいのか、それとも俺がおかしいのか、ただ、笑ってごまかした。
「協力してね!お兄ちゃん」
俺達は、兄妹だ。いつだって春奈は泣いていて、俺が春奈を守っていた。そんな思い出ばかり、だから俺は、春奈を応援したい。
今だって俺の隣に居る佐久間に話し掛けようとそわそわして落ち着きがない。俺はそれを黙ってみていた。

体育の授業では2班がバスケで練習試合をしていて、佐久間がゴールを決めた時だった。いきなりの女子の歓声に俺と春奈は驚いた。あの顔だからか、人気が凄く高い。春奈も横でため息を吐く。
「安心しろ春奈、佐久間とは結構仲いいだろう。大丈夫だ」
「……そうかなぁ」
笛がなり先生が4班の集合を掛ける。俺達の番か、座っていた身体を持ち上げてコートに向かったら後ろから名前を呼ばれた。
「ガンバレ、鬼道さん」
何故俺なのか、ただ佐久間が微笑んだのがかっこよく見えた。俺は恥ずかしくて慌てて前を向いた。自分でも頬が緩んでいたのがわかった。



ピロリン

着信音が聞こえたと思えば隣に居る佐久間が携帯を開き、ああ、と声をもらした。
「あいつか」
まさか、と春奈と俺は硬直した。彼女なのかと焦っていたらただの友人らしい。思わずほっと安堵の息をついた。つい目が行った携帯を見れば、キラリとストラップが揺れた。
「佐久間、それ」
「はい?」
「ストラップ」
手を伸ばして佐久間の携帯を奪う。トンボ玉の大玉レース、綺麗だから魅入っていたら春奈も目を輝かせていた。
「私も欲しいです!」
「でも、高そうだな」
春奈が凄く欲しそうにしていたから、思わず微笑んでしまう。何処で買ったのかと春奈が聞けば佐久間は曖昧な答えばかりで、源田がああ、と言おうとしたら佐久間の蹴りを食らっていた。


黒板に書かれる字を写しながらシャーペンを握っていたら、佐久間に腕をつつかれる。
「手、出してください」
「手?」
言われるままに手を出せば、俺の手のひらに先程の佐久間の携帯に付いていたストラップがあった。つい顔がほころんでトンボ玉を眺めていたら、佐久間も嬉しそうに笑う。
「ありが……」
私も欲しい、と言っていた春奈の顔が浮かび、俺は口を閉じた。佐久間に返そうとすれば、聞く耳を持ってくれなかった。
「佐久間、やっぱりこれ」
「いらなかったら捨ててください」
そんなこと出来る訳ないのに。俺はもらったストラップを握り締めた。



20100414
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