掴まれた手は大きくて暖かくて、俺は恥ずかしくて豪炎寺の手ばかりを見つめていた。
「ありが、とう」
緊張しているから、声が震える。でもなかなか豪炎寺は手を放してくれなくて、見上げて確認しようとしたら秋と目が合って、全身に冷や汗が流れた。秋は豪炎寺が好きだ。
秋が慌てて背中を向けるから、俺も慌てて豪炎寺の手を振りほどいた。何かを話そうとしていたけど、俺は秋との関係に傷を入れたくなかったから、また豪炎寺から逃げた。豪炎寺も一瞬固まったけど、すぐに冷静になって俺から離れた。豪炎寺の背中に今すぐにでも飛び付きたい。だけどそれは、俺には許されないんだ。

ゴール間近になってきたところで昼食を取ることにした。だけどやっぱり黙々と沈黙ばかりで、秋も食べずらそうだし、俺は何か話題はないかと考えた。
「あ!」
そういえばリュックサックの中に凍らしたゼリーを入れっぱなしだった。秋にあげて、風丸にもゼリーを渡す。秋も風丸も楽しそうに食べていて、少しは雰囲気が和んだとほっとした。
「ご、豪炎寺もよかったら」
「いらない」
「でも、たくさんあるし……」
押し付けるようにたくさん入ったゼリーの袋を差し出せば、豪炎寺はおもいっきり俺の渡した袋を叩き落とした。俺の手からゼリーの袋が落ち、凍らしたゼリーが次々に転がっていく。
「さっきからなんなんだ。避けたり話し掛けたり、嫌いだから声をかけるなって言ったのは円堂だろう!」
その言葉に、俺はズボンを握り締めて黙り込んだ。豪炎寺は、見るからにイラついていた。
「言っておくが、俺もおまえみたいな奴は嫌いだ」
びくりと肩を震わして、俺は固まった。嫌い、豪炎寺は俺が嫌い。俺が酷いのは確かだ、だけどさすがにそこまで言われるとキツい。
風丸が慌てて豪炎寺を引き止めていて、俺と秋は落ちてバラバラに転がってしまったゼリーを拾った。
「ごめんな、せっかく楽しいキャンプにしようって言ったのに……」
「円堂くんは周りに気を遣いすぎだよ」
「……う」
「……あのね、実は私、好きな人が出来たんだ」
「え?!」
「ごめんね、早く言わなくて……だから私にも気を遣わなくていいんだよ。豪炎寺くんのこと、好きなんでしょう?」
「……でも俺、酷いこと言ったし、無理だよ」
ようやく集めたゼリーの袋を閉じて、風丸が呼んでいるから戻ろうとした。すると後ろでキラリと何かが光に反射して見えて、俺がそれに触ろうとしたら秋に危険だと言われて諦めた。崖だったらしい、危なかった。だけど、あの光はなんだろう。



20100414
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -