中学校最後の春、大嫌いなクラス替えがやってきた。俺は明らかに不機嫌だ。心配そうに隣に居る春奈が俺を笑わせようとするけど無理だ。いや、でも春奈の為に笑ってみよう。口元だけが引く付いて終わった。
「お兄ちゃん、今年は私がいるから!ノー人見知り!」
「春奈……」
教室に入る時も春奈の後ろにこっそり隠れる。妹の後ろに隠れるなんて、お兄ちゃん凄く恥ずかしくなってきた。春奈は顔が広いのか、仲がいい奴が多いが俺は全くの逆だった。
春奈は俺とは遠い席に座り、俺も自分の席に着こうとしたけど、やはり春奈の為に挨拶は必要だと思い鞄を抱き締めて周りを見る。
「お、あ……うぅ」
ダメだ、お兄ちゃん駄目だったよ春奈。勇気を出したけどこいつ俺には全く気付かないし、やっぱり俺に馴れ合いは無理なのか、それでも春奈の為にめげずに挨拶をしようとしたら横から自分を笑う声がした。
俺がぴくりと眉を寄せると、笑った奴とは反対に前の席に居る奴が慌てて止めようとしている。
「おい佐久間、ヤバ……」
「挨拶に必死になるなんて、つい可愛いと思ってさ」
「別に、必死になるのはおかしいことじゃない」
席の隣に居る眼帯の男を睨み、ストンと椅子に座った。はっきり言った俺の台詞に、眼帯を付けた男は俺から視線を外さなかった。それが気まずくて顔を逸らした。
「はい、では今日は委員会を決めるから司会指名するな。じゃあ適当に鬼道、よろしく」
あの教師、適当に俺を指定した挙げ句見向きもしない。俺は教卓に一人立ってプリントを見た。委員会だと?ふざけるな、こんなも……いや、春奈があんなにキラキラした眼差しで俺を見るからしばらくは続けてやろう。
「委員に立候補、ありませんか」
クラス中うるさいし誰も俺の話を聞かない。俺が溜め息をつくと、す、と一人手を上げた。さっきの眼帯の失礼な奴だ。俺が名前に困っていると、苦笑いで佐久間です。と言った。
「提案なんですが、みんなどうでもいいみたいだし、クジにしませんか?」
ずらりといつの間にか用意してあるクジを見せびらかすと、佐久間はにやと怪しく笑った。
「クラス委員長になっても、文句ねえよな?」
クラスのみんなにそう言うと、いきなり静かになってみんな嫌そうな顔をする。それからスムーズに各自が自ら委員を立候補していった。

無事に終わった委員決めに、俺は佐久間に礼を言うと、佐久間は一瞬驚いて、だけど目を細めて笑ってくれた。



20100413
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