保健室で靴擦れの治療をしてもらい、俺はチェック表を書いて先生に渡した。風丸は隣で紙に何かを書いていたけど、すぐに椅子から立ち上がった。
「じゃあ、戻るから」
「ああ、ありがとな!」
風丸に手を振ろうとしたら手のひらに紙を渡され、それを開いた。そこには風丸のアドレスと放課後来れたら理科室に来てくれ、と書いてあった。
保健室から出て行こうとした風丸に振り返り、俺はもちろん行くぜ!と笑った。そしたら風丸は微笑んで、待ってる。とだけを残して去った。あんな笑顔見たことがなくて、俺は恥ずかしかった。



放課後、約束の理科室に行けば風丸が机に乗って俺を待っていて、風丸に駆け寄れば目の前にはたくさんの積み重なる机の山があった。
「ここ、初めてだ」
「秘密基地があるんだ」
「秘密基地?」
風丸が腰を下ろして一番下の机を指差し、中に入る。俺も風丸に続いて机をくぐると、中は空洞になっていた。周りには机がたくさん並べられ、積み重なっている机で外からは見えなかった。
手元にあるコンビニ袋を渡され、中身を確認すればたくさんのお菓子が揃っていた。
「すげえ、いっぱいだ!」
俺がお菓子をたくさん手に取ると、風丸は俺を見て微笑んだ。
「じゃあ、毎日ここで会わないか?」
それに酷く顔が赤くなって、俺は勢いのまま強く頷いた。どうしよう、俺、風丸のことが好きかもしれない。手にあるカカオチョコ割って風丸に半分渡した。
同時に食べて、それは瞬間口内に苦味が広がった。俺と風丸は顔を見合せてものすごい渋い顔をした。
「俺、チョコと薬とテストは甘い方がいい」
「なんか変なの混ざってるな」
呆れたように俺を見た風丸だったけど、それはすぐに変わって、真剣な眼差しで俺を見た。どうしたのかと首を傾げたらいきなり抱き付かれて、俺は驚いて何も出なかった。
「円堂、もし俺が……風丸じゃなかったらどうする?」
言った意味がよく分からなくて、聞き返そうとしたら教室の扉が開く音がした。先生だ、俺達は急いで教室の窓から逃げようと静かに移動した。
風丸が先に外へ出て、俺もあとから出る。風丸が手を伸ばしてくれたから、俺が握ろうと触ったら腕を引かれて抱き締められた。そのまま地面に倒れて、恥ずかしくて立とうとしたら肩を掴まれて耳とおでこにキスをされた。人の声がして慌てて起き上がると、風丸は俺を見て満足に笑った。
「帰ろうか」
それに頷いて俺も荷物を持って風丸を追った。頭の中は風丸でいっぱいで、ドキドキしてて、だけど一つだけ引っ掛かりがあった。

『円堂、もし俺が……風丸じゃなかったらどうする?』

風丸は、なんであんなことを言ったんだろう。



20100412
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