お昼のあとのマラソンはさすがに応えるけど、俺は体育で身体を動かすのが好きだから走り続けた。気付けば俺だけのグラウンドになっていて、一番だったことに気付き、両手を上げてはしゃいでいたら人の気配がした。
俺のことを不思議そうに、でもこれといって興味は無さ気に見ていた。
「……見学?」
「ああ」
頭がツンツンしてて、それでいてクールな雰囲気。鼻をすすってるから風邪なのか、でも何処かで見掛けた気がする。
「あーっお昼!購買!ロイヤルココア!」
「ああ……(トロトロして邪魔だった奴)」
指を差せば俺を思い出したのか、納得したような顔して、また鼻水をすする。ココア好きなのか?そう問われて迷いなく頷いた。すると呆れたように溜め息をついて俺を見る。
「幸せそうな面だな」
よく言われるよ、と笑顔で言えば目の前にいた奴は意外そうに目を丸くして俺をまじまじと見た。すると顔を背けて鼻水を押さえている。
「おまえ、世の中に嫌いなモノなんてないだろうな」
「え!?あるよ、あるある!」
どれ?と目で言われた気がして、とりあえず人差し指を立てて嫌いな物を頭の中で探した。喧嘩と、嘘と、修也って奴だ。そう言えばこいつはいきなり訳のわからない顔をして鼻水を吹き出した。
俺は慌ててズボンの中にあるポケットをまさぐりハンカチを出して鼻水を拭いてあげた。
「すまない……」
情けなく謝るのがおかしかったけど、俺は笑顔のまま奴を見た。しばらくしたら他の奴らも戻って来たから、俺は手を振ってさっきの『風丸』とジャージに書いてある名前の奴に振り返った。
「風邪お大事な、風丸!」
「……え」
すると風丸はぽかんとしたように口を開けるから、俺は指で自分の胸を指差した。風丸が着ているジャージに『風丸』と名前が書いてあるから呼んだだけで、すぐに俺は同じクラスのみんなの元へ走って行った。



「風丸、ジャージ助かった」

「もう風邪は大丈夫か?」

「ああ、だいぶな……」



気付けば後ろ姿のあいつを見ていた俺は、おかしいのだろうか。



20100412
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