ようやく一日が終わり帰れる。だけど今日は雨が酷くて、私は窓を眺めて息をついた。隣に居る吹雪が掃除をしながらも私に話し掛ける。器用な奴だと思った。
「え?マジで?おう、いいぜ」
誰と話しているのか、ただの電話なのに相手の顔が気になる。私がちらちらと晴矢を見ていたら、箒を持って掃除をしていた吹雪がまた寄って来た。
私が窓側に居たのが悪いのか、吹雪が私の腕をゆっくり引くと、ふわりと目の前のカーテンが揺れた。視界は吹雪で、暖かくて柔らかいものが私の唇に触れた。
「ン、」
カーテンで隠されてはいるけど、二人して隠れるのは怪しすぎる。いや、そうじゃなくてキスされた。そう、キスだ。私が離れようとしたら、吹雪が私の頬をさすり口内に舌を伸ばした。
「ふっ、ぶ、ぁ」
「ん……風介」
私の名を呼んだかと思ったらいきなり肩を強い力で掴まれ、私の身体は驚いて震えた。呼び捨てで呼んだ瞬間、吹雪が別人のように変わり、舌使いも荒々しく、激しくなった。
「や、んン、ぷぁ」
「はっ、ヤラシイ顔」
「んや……っやめ、」
「やめるかよ。ホラもっと舌出せ」
舌に糸が引いた瞬間にカーテンが誰かにシャッと開けられた。私が慌てて吹雪から離れて口元を拭いた。
「あれ、僕……あっ」
何かを思い出したように吹雪はきょとんとして、次に頬を桃色に染めた。だけど私は吹雪よりも、目の前でカーテンを引いた風丸が怖かった。
「え、まさか、……え?」
「ち、違う!吹雪が倒れたから、私が支えて……」
「そうなのか?……でも、吹雪が突っ掛かってるようにも見えたしキスしてたようにも……」
「気のせいだ!」
怒鳴り付けて席に着けば、後ろの方からの風丸の視線が痛かったし、前の席に居る吹雪は私を見てニコニコしていた。しかしなんなんださっきの変わりようは。
でも晴矢にだけは見られなくてよかった。私は帰りの会が終わって帰ろうとしたが、晴矢は久しぶりに幼なじみと帰るらしい。誰だ、女なのか?内心ハラハラしたが、教室に顔を出したのが男だったので私は安心した。
「涼野、今日も、」
「いや、一人で帰る」
風丸と帰るつもりだったが、あんな場面を見られて冷静でいられるかが不安だ。私は慌てて教室を出た。


「あれ、涼野チャン」
「不動?何をそんな所で……」
また何か悪さをしたのかと思ったが、不動は大げさに溜め息を吐いて空を見ていた。私が靴を履いて空を見上げれば雨。不動を見れば傘は持ってなさそうだ。
「……傘、入る?」
「は、マジ?」
「くだらない嘘はつかないよ」
傘を広げたら不動はバツが悪そうな顔のまま私の隣に並んだ。不動と隣で歩くのは違和感があって慣れないけど、何処か新鮮だった。
「サンキュ……後、悪かっ……た」
「フッ、君も今みたいに素直になれば友達くらい出来るのに」
「ばーか、涼野チャンも似たようなもんだろォ?」
「黙れ、雨に濡れたいか」

素直じゃない私達は同じ傘で帰り道を歩いた。



20100412
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