カチカチカチカチ、静かな教室にパソコンキーを打つ音だけが部屋に響いた。静かなのは好きだから、私は落ち着いてキーを押す。隣に居るのが不動でなければもっと落ち着けたのだが。
「あー、暇」
無視してまたキーを打っていたら横から眼鏡を奪われ、私は不動を睨んだ。おお怖い、と笑ってのける不動に怒りを覚えながら眼鏡に手を伸ばす。遠くにやられて、私の眉間に皺がよった。
「まあまあ、俺が代わりに打ってやるよ」
「余計なことをするな」
「いいじゃねえかちょっとぐら……」
すると後ろの席に居た晴矢が不動の手にある眼鏡を奪った。予想していなかったことに不動が舌打ちをし、そして何故か晴矢が自分の眼鏡を掛けた。
「どうだ?俺って知的じゃね?」
「いいから返せ」
「んだよせっかく取ってやったのによー」
「あ、ありがとう……だから、返せ」
「……お、おう」
急に照れられても困るのに、晴矢は顔を赤くして素直に眼鏡を返した。私がお礼を言うのがあり得ないのか?失礼だな。
眼鏡を付けてまたパソコンに向き合えば、隣の不動は真面目に打っていて、私は横目で見ていた目線を戻した。
テキストを写していたら画面がいきなり変わった。は?とパソコンに食い入ると、画面には『メールが届きました』私がジト目で不動を見れば、不動は口元を緩めただけで私を見なかった。真面目にやってるなんて思った私が馬鹿だった。

『今日ヒマなんだけどさ〜俺と遊ばない?』


新手の嫌がらせか、私はプチリと頭の血管が切れた気がした。なんだ、このメールは、気色の悪い。私は音を立ててキーを弾いた。

『真面目にやれ、迷惑だ』

『照れんなよ。いつも南雲の下で泣いてんだろ?涼野チャン』


ブチッ

「貴様ああぁぁあぁぁぁあ!!」

私が隣に居る不動に掴み掛かると不動は笑いながら殴ろうとした私の手を掴んだ。教室に居るみんなが私達を驚いたように見て、騒ぎだす。
「怒んなよなァ冗談通じねーし」
「冗談にも程があるぞ、不動、凍てつくがいい」
「どうせなら涼野チャンの中で凍てついてみてえなぁー……ナンチャッテ」
怪しく目を細めた不動に私が驚いて胸元を掴む手を離す。私にしか聞き取れないくらい小さな声は、いつもよりトーンが低くて、やけに色付いていた。



20100412
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