暴力あり



ぺらぺらぺらぺら、下らない言葉を並べて俺の鼓膜に声が触れる。そのうるさい口を黙らせようか、誰に笑い掛けてるんだよ。俺の居場所を奪ったお前が、お前達が、愛想笑いを含みながらボールを蹴る。そうだ、俺は所詮あいつらの足元にも及ばない。強くない、むしろ弱い。
だけど初期のサッカー部員は俺だ。でもフィールドに立っているのは俺じゃない。俺の代わりの強い奴ら。実にくだらないと溜め息をついて部室に帰った。静かなこの空間が俺を慰めているようで、包んでいるようだった。
しばらく目を閉じていたらガラリと部室の扉が開かれた。
「半田くん、体調が悪いの?」
いや、別に。適当に返事を返して天井を眺めた。入って来た木野は気まずそうに俺に視線を送る。俺は椅子に座って頬杖を付いた。木野に目をやることもなくまた天井を見る。
「一人にしてくれ」
出て行くタイミングを失った木野が静かに謝って出て行った。一人のこの空間がいやに落ち着いた。耳を澄ませばボールを蹴る音や円堂の楽しそうで真剣な声、少し落ち着いてきた。
「はーんだ!」
部室の窓からの突然の来訪者。俺は目線だけを合わせてそいつを見た。何だよ、とでも出てけ、とも言わない俺に不思議がって首を傾げた。
ごめん、俺今お前に会いたくなかった。落ち着いていた心情が激しく音を立てて怒りに変わった。それなのにこいつはノコノコと窓をきちんと閉めて俺の正面に向き合った。正面の椅子に座り俺の顔を覗き込む。やめろ、とだけ言うとこいつは笑顔で頷いた。それが俺の癪に触った。気付いた時には拳は作られて目の前の奴を殴っていた。反動で後ろに倒れて頬をさすり、またにへらと笑った。
「一之瀬、やめろ」
睨み付けて見下ろせば不思議な顔をしてまた笑う。こいつはどうやら俺を怒らせたいらしい。今度は倒れたままの一之瀬を蹴った。むせ返り腹を押さえる一之瀬をまた蹴る、蹴る。ごほっと吐いた一之瀬の髪を掴んで持ち上げた。お前は何をしに来たんだ。俺を怒らせに来たのか、蹴られに来たのか。
「俺さ、半田を笑わせに来た」
また性懲りもなく笑う一之瀬を床に投げ付けた。こいつ、俺を馬鹿にしてるのか嘲笑いに来たのか、行動が全く読めない。股を踏み付けたら痛がって眉を寄せていた。ざまあみろ、俺の居場所を奪った罰だ。それでもこいつは笑っていたけど。


20100321
他サイトで半一を見た。
ありだと思う。
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