「ムカつく!」
俺はサッカーボールを蹴り飛ばして頭の隅でちらつく一面をまた思いだす。
一之瀬と秋、あの2人が幼なじみだってことくらい知ってたし、一之瀬のアメリカ育ちのスキンシップがあることだって知ってた。なのに普通、俺の目の前で抱き付くか?
やっぱり思い出しただけで腹が立ってきた。別に付き合ってる訳でもないし特別なんてものじゃない。ただ、一之瀬が俺のことをすきすき言うからこっちはもう期待しまくってて、なのに一之瀬の奴最近俺ばっかり避けてる。絶対これは一種のイジメだ。

『半田のこと好きだよ』

一度なら未だしも、もう数回は言われてきた言葉だ。いきなりなんなんだ、この変わりよう。一之瀬のあの態度と視線が気に食わない。最近では円堂に続き豪炎寺にも抱き付いているし、これにはもう我慢出来なかった。
「一之瀬!」
「あ、何?半田」
練習中でグラウンドに立つ一之瀬を呼べばなんともつまらなそうな視線を向けてきた。俺に飽きたのかわからないけど、これじゃあ俺が納得いかない。
「話があるんだ」
「へえー……」
それに反応した一之瀬は長い睫毛をぴくりと揺らし、口元を微かに緩めた。
みんなから離れた場所に移動すれば、一之瀬は早くしてよ、と俺を急かす。なんかあまりにも冷たい気がする。少し不安になった。
「最近、避けてるだろ?」
「うん、そうだよ」
「なんでだ?」
「なんでだと思う?」
明らかに余裕の表情を見せる一之瀬に内心イラつきながら、知らないと答えた。そしたら一之瀬は大きくため息を吐いた。
「つまんないなあ、半田って鈍感……俺のこと好きになったと思ったのに」
「え、」
「ねえ半田、半田は好き?俺のコト……」
「は、えと、」
だんだん近付いてくる一之瀬の顔から目が離せずに顔を真っ赤にしていたら一之瀬がくすりと笑った。ねえ?と首を傾げて甘えてくる仕草をするから、俺は慌てて一之瀬から離れて、好きだよと吃りながら言った。言ってしまった。
咄嗟に口を覆ったけど、一之瀬はニコニコと嬉しそうに目を細める。
「半田、全然好きって言ってくれないんだもの」
「だ、大体俺ら付き合ってないだろ?」
「じゃあ……俺、土門に移ろうかな」
流し目でさらりと言い、長い睫毛が軽く伏せられた。どうしようかな?と笑う一之瀬に、俺は慌てて付き合う!と叫んでしまった。
くるりと振り返った一之瀬は予想通りのことに目を輝かせ、俺に抱き付いてきた。
一之瀬は俺を振り回すのが得意みたいだ。



20100421
小悪魔な一之瀬ってかわいいよね。
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