今週の金曜日までに雷市せんぱいがあたしのほうに振り向いてくれなかったら呪いをかけようと思っている。雷市せんぱいと主子せんぱいが別れる呪いだ。ネットで調べたらその呪いに必要なものは4つあって、3つは集まったけれどあと1つ足りない。

「ともちんのおばあちゃん家って黒猫飼ってんでしょ? その毛をさ、3本ばかし抜いてきてよ」とあたしは昼休みに、雨で湿気てしまった髪をコテで巻き直しながら言う。「それだけが足りないんだよねぇ」
「おい友部。お前、ともちんだろ」と大河がスマホから目を離さず、隣のともちんの脇を肘でつつく。こいつ器用だまったく。
「あ、俺」と、ともちんが読んでいた本から顔を上げる。なにその、ああ俺、そういえばともちんだったんだ、みたいな反応。

「いいけど、カラオケで」
「却下」
「ラムのラブソング」
「却下」
「じゃあ二の腕」
「却下」
「触らせて」
「変態」
「ふくらはぎ」
「てかさ、てかさ、あたしディズニーランド行きたーい」
「話変わるのはえー」
「今度いつ休みだっけー? ねぇ大河ディズニーいこーよー」
「友部と行けよ。俺ぜってーやだ」
「えー。だってさ、ともちんしれっと手握ってきそうなんだもん。パレード見てる時にさ、しれっとこう掴んできそー。ひゃー。まじむりー。想像しただけでむりー」
「…………」
「ほら図星。絶対むりー。ともちんとはむりー。大河いこーよー」
「俺だって絶対むりー。公子とは絶対むりー。お前と行くならともちんと行くわー。まじともちん俺と行こうなーディズニー」
「げ、キモ。大河の大好きな主子せんぱいに大河はそっち系ですってラインしとこ」
「は? お前主子せんぱいのライン知ってんの?」
「知ってるけど?」
「なんで?」
「教えてもらったから」
「嫌いなのに?」
「だめなの?」
「女ってこえー。まじこえー。やっぱともちん俺とディズニー行こうなー」
「男とは行かん」
「だってさー」
「公子とは行ける」
「絶対行かなーい」
「ホテルミラコスタ」
「え」
「予約取れるけど」
「まじ?」
「公子が泊まりたいなら」
「じゃあ行くー。ミニーちゃんルームね」
「そのとき」
「なに」
「手」
「却下」
「繋いでほしい」
「却下」
「じゃあ」
「変態」
「……まだ何も言ってん」

Take my hand

第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -