46
ギギッ、チキッ、と刀同士の擦れる音がする。文次郎も新助も額に青筋をたてていた。

「も、文次…」
「バカタレ!早くしろ!」

花は手裏剣を新助に向かって投げたが、新助は後退してそれを避けた。

「あ…ありがとう」

花は文次郎の背中に言った。
まだ、顔を見れる自信が無い。

文次郎と新助の激しい刀のぶつかり合いが始まった。

「潮江文次郎…話は聞いてるぜ、光の男なんだってな?でもてめぇは何も知らねぇらしい」

文次郎は少し眉を潜めた。

「光の正体…学園に入学した理由…」

花はハッとして、新助に向かって苦無を投げた。しかし、それを弾いたのは文次郎だった。

「な…」
「悪いな、花。俺は本当のことが知りてぇんだ」
「だ、だめ…それは…!」

その時、一際大きな爆発が起きた。爆風が花や文次郎、新助を包む。

「おーおー、すげぇな」
「み、みんな…!」

今の爆発で、上級生や先生たちも大分ダメージを受けていた。

「よそ見してると危ないぜ」

新助は一瞬の間に、文次郎の刀を弾き飛ばして斬りかかった。文次郎はギリギリのところで急所を外したが、胸から肩にかけて大きな傷を負ってしまった。

「……さすがに倒れねぇか」
「当たり前だ…っ、バカタレ」

強がっているが、文次郎はもう限界を超えているはずだ。
文次郎だけではない。この場にいる誰もが傷つき、疲労していた。

もう、終わらせるんだ

新助と文次郎の間に入り、花は文次郎を塀の下へと蹴り飛ばした。

「なっ、」
「ごめん…文次郎」

もう、終わりにしよう

「随分と死にたがりなんだな」
「目の前で誰かが死ぬよりマシ」

私が代わりになるから

新助は刀を振るう。しかし、花の右手が刃を握り、刀を止めた。押しても引いても、動かない。
右手からはポタポタと血が流れて垂れるが、花は顔色1つ変えない。

「もし誰かが死んだとして…それは仕方ねぇだろ?そいつが弱かったからいけねぇんだろうが」
「弱いことは悪いことじゃない。これ、動かないでしょ」

花は右手に目を向ける。

「これが私とあなたの違い」

花は刀を離し、新助の腹を蹴った。新助は、倒れはしなかったが口の端から血を流した。
間髪を入れず、花は新助を塀の下へと蹴り落とした。新助は、地面に倒れているツキヨタケ忍者たちの中に落ちて、砂煙が新助の姿を隠した。

まだこんなものじゃ倒れないはず…

花は次の攻撃に備えて刀を拾おうと、新助に背を向けた、その時――

ダン、ダン、

「――ッ!!?」

火縄銃の音、そして左足と右肩に鋭い痛み。花はガクッと膝をつき、左手で右肩を押さえた。弾は貫通していた。

「…急所は外したか」

新助が火縄銃を担いでいた。足元にはもう一丁、銃口から煙が立ち上っている火縄銃が落ちている。倒れていたツキヨタケ忍者が持っていたのだろう。
新助は火縄銃を捨て、新しいものを担ぐ。

「これが俺とてめぇの違いだ。"向こう"に行ったら夜太郎によろしくな」

新助がにやりと笑った。引き金に指をかけ…

「おいおい、勝手に人を殺すなよ」

ふいに、声がした。若い男の声が。
花の盾になるように、目の前に男が現れた。新助の目が大きく見開かれた。

「な……!?」

紺色の忍装束に、紺色の髪の毛。
花はゆっくりと顔を上げる。

まさか……!

「久しぶりだな、村咲花」
「……月島…夜太郎…!」



第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -