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忍術学園とツキヨタケ忍者隊の戦いは激しさを増していった。
あちこちに人が倒れている。絶命しているのか気絶しているのか、それさえもわからない。
幸い、まだ忍術学園側に死者は出ていないがそれも時間の問題だと思われた。このまま戦いが長引けば、最悪の事態が起きるかもしれない。
「(早く…早くこいつを倒さなきゃ…!)」
花は、新助を何度も蹴り、殴り、手裏剣を投げ、苦無を飛ばす。しかし怪我を負わせることができても、新助はまだ余裕そうだった。
「焦ってるだろ」
新助がニヤリと笑う。
「早く俺を倒さねぇと、ってな」
新助の拳が花の左頬に命中し、花は口の中に血の味が広がるのを感じた。
「………っ」
花は一旦新助から距離を置き、手の甲で口を拭った。
「俺と戦っている間に他の奴らが殺されるんじゃねぇか、誰かが傷つくんじゃねぇか、私が助けに行かないと…ってな。だから、早く俺を倒さねぇといけねぇんだろ」
ビュッ、と真っ直ぐに苦無が飛んでくる。花がそれを弾くと…
「!?」
前方にいたはずの新助がいない。気付いた直後、背後に気配を感じた。
「やってみろよ」
「――!!」
花が振り向く。瞬間、新助は花の脇腹を力一杯蹴り、花は再び地面に叩きつけられた。砂煙が舞う。
「〜〜〜〜ッ!」
今のは効いた…
「ゲホッ、コホッ」
咳と一緒に血がポタポタと垂れた。
「そんなに早く終わらせてぇなら、」
新助は弓を構える。
「今すぐ終わらせてやるよ」
無数の矢が花に向かって真っ直ぐに飛んでいった。しかし煙のせいで花は見えていない。
花が気付いたとき、矢はもう目の前に迫っていた。
考える間も無く、花は咄嗟に目をつぶった。遠くで、誰かが花の名前を叫ぶのが聞こえた。
たったの1秒が、何時間にも感じられた。
目の前に熱を感じ、花はそっと目を開けた。
「…!?」
紺色の髪の毛。
「え、な……光、ちゃん…?」
光が花に覆い被さっていた。光の背中には矢が……
「う……ゴホッ」
光の口から血がこぼれる。
「花、さん……怪我は…」
花は愕然としまま、小さく首を横に振った。それを見た光は、
「よ、か…た……」
安心したように微笑み、そのまま倒れた。
静まり返る戦場。
「…………っ、あ、」
花の体が微かに震える。
ズキ、ズキ、
頭の奥が痛い…
震える手で、耳をふさぐように頭を押さえる。
「あ…っ、」
ドクン、ドクン、
心臓の音がうるさい
花はきつく目をつぶった。
「う、あ、あぁ…っ」
頭の中が掻き回されてるみたいに、
頭が痛い…重い……痛い………!
「花!光!」
文次郎が二人の元へ駆け寄った。倒れる光を抱き上げると、微かに息をしているのがわかった。
良かった、生きている…
「花?おい…大丈夫か?」
頭を押さえて俯いたまま動かない花を不安に思い、文次郎が声をかける。
その声に反応したのか、花はゆっくりと目を開けた。
両手で頭を押さえたまま、花は少し顔を上げた。
花の両目に、光と文次郎の姿が映る。
「…光、ちゃん……
し、おえ、く……
……………もん、じろう…?』
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