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刀は嫌いだ

花は持っていた刀を折り、地面に捨てた。

扱いづらいし、元々私には合わないらしい
それに、

「大丈夫か?」
「うん」

人を斬った感触が手に残るから

花は頬についた返り血を拭う。炎に照らされた血はギラギラと光った。

嫌いだ

文次郎と久々知は戦場に戻っていった。花もすぐに苦無を取り出し、向かってくるツキヨタケ忍者に投げた。
ここは戦場、休む暇はない。
周りを見ると、倒れているのはほとんどがツキヨタケ忍者だった。忍術学園の忍たまも何人か倒れているが、命はあるようだ。

「ひいいっ」
「死ねえええ!!」
「ぎゃあああっ、助けてええ」

悲鳴、断末魔、泣き声……様々な声が聞こえる。次々と人が倒れていく。
しかし誰も気にしていられなかった。
少しでも気を抜けば、次は自分がそうなるかもしれないから。

花は違った。
誰かが倒れるのが見える度にそちらへ目を向ける。その人が、大切な人ではないことを確認するために。

また、誰かが倒れた。紺色の忍装束…よかった、学園の誰かではなかった…

「戦闘中によそ見とは余裕だな」
「!」

やば…

背後に迫っていたツキヨタケ忍者の刀が花の首に迫ってくる。しかしその腕は突然飛んできた縄標によって縛られ、動かすことが出来なくなった。

「なに…!?」
「(縄標…まさか…!)」

縄標の先には、長次が立っていた。

「……花、怪我は無いか?」
「うん、ありがとう」
「伊作は救護係にまわっている…」

長次は伊作とペアだった。塹壕の奥で伊作は怪我人の手当てをしている。
縄標で身動きが取れなかった忍者は、三木ヱ門の放った砲弾によって吹き飛ばされた。

「長次も課題が終わったんだね」
「今回は簡単だったからな…」

不運な伊作がペアにも関わらずこんなに早く帰ってくるとは、余程簡単な忍務だったのだろう。

花と長次は戦場の中へと向かっていった。

ツキヨタケ忍者は、倒しても倒しても数がなかなか減らなかった。いくら忍者学園の先生や上級生が強くても、これでは多勢に無勢だ。

しかし、花は妙な違和感を感じていた。今、花と戦っているツキヨタケ忍者…

「(この人、本当に忍者…?)」

手裏剣の投げ方も苦無の扱い方も滅茶苦茶。何より、戦いに怯えている。
花は素早く相手の背後にまわり、手刀で首を打った。気を失った男はふらりと倒れた。
次に花に襲いかかってきた男もそうだった。刀の扱いが素人で、既に怪我を負って動きが少し鈍くなっている花にさえ傷一つ付けることができなかった。
その男も手刀で倒すと、そばに山田先生がいるのに気付いた。

「先生、あの…」
「ふむ。こいつらは忍者ではないな」
「城の使用人でしょうか?」
「恐らくな」

山田先生は塀の上で戦いを眺める若頭の方を見た。

「どうやら、あいつを叩かなければ意味が無さそうだ」

花は聞いていなかった。

「どうして…忍者でもない人に戦わせるの…?」

また一人、誰かが倒れた。血だらけの顔で、涙を流していた。

「戦いたくないのに…どうして戦わせるの…?」

花は若頭を見上げた。若頭は目を細めて笑い、花を見下ろしていた。

そのとき大きな爆発が起きて、大勢のツキヨタケ忍者たちが吹き飛ばされた。黒い煙の向こうに人影が見えた。

「小平太」
「花か……、無事か?」

小平太が投げ焙烙を投げたらしい。吹き飛ばされた忍者たちはボロボロになりながらも立ち上がる。

「じゃあ留も来てるね」
「ああ、向こうで戦ってる」

あとは、仙蔵と光だけだ。


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