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長かった夏休みも終わり、今日からまた授業が始まる。
………と、思ったのだが。

「身体計測?」
「うん、何事も体が一番だからだって学園長先生が」
「そういや学園長先生、夏休み中に腰を痛めて寝込んでるらしいぞ」
「だからか…」

学園長の突然の思い付き(?)で身体計測を行うことになった。花と光は忍たまという扱いなので、くノ一教室ではなく六年男子と一緒に計測することになっている。

午前は下級生、午後は上級生というスケジュールらしい。一年生、二年生と学年順に行うので六年生は一番最後だ。
午後もだいぶ過ぎてから、やっと六年生の番になった。

保健室に、上衣を脱いだ六年生が集まった。小平太に至っては肩衣(中に着てる黒いやつ)まで脱ぎ、上半身は一糸纏わぬ姿になっていた。

「せめて肩衣は着ろよ」
「えー、なんで?」
「なんでって…花と光もいるんだぞ」
「でも花だって半裸だぞ?」
「は?……って、うわあああっ!!」

振り向いた留三郎と文次郎は顔を真っ赤にした。
花も肩衣を脱ぎ、さらしのみの姿になっていた。

「え…何?」
「何?じゃねぇ!!」
「肩衣を着ろおおお!!ちょ、光も脱ごうとするな!!」
「花、後ろから見るとすごくセクシーだぞ!」

小平太が後ろから抱きつき、顎をのしっと花の頭に乗せた。まるで大型犬がじゃれて飼い主に飛び付いているみたいだ。

「花っておっぱい大きいんだなあ!いつも制服着てるからわかんないけど」
「そうかなあ?」
「肌も白いしスベスベしてるし、花なんかいい匂いするし。食べちゃうぞ?」
「それ、食べるの意味違ぇだろ!」

危ないことが起きる前に、長次が小平太を花から引き剥がした。ブーとむくれる小平太が体重計の方に連れ去られると、花は今度は光に捕まった。
光は、花の脇腹にある傷痕に触れた。

真一文字につけられたその傷は恐らく一生消えないだろうと思われた。

「光ちゃん…?」
「この傷…残っちゃいますよね…」
「そうだねー、これは一生消えないかな。いつどこで斬られた傷なのかわかんないけど」

花は笑っていた。

「残っても消えても、私は構わないけどね」
「そんな、こんな大きな傷…!」

光は今にも泣きそうな顔をしていた。

「どうして光ちゃんがそんな顔するの?」
「…ッ、だって、」

私のせいだから
とは言えず、光は俯いた。

ぽんぽん

花が光の頭を撫でた。

「よくわかんないけど、光ちゃんが気にすること無いと思うよ。それに光ちゃんを泣かせたら、私、潮江くんに殺されちゃう」

花は笑ったが、光の表情は曇ったままだった。

「だったら肩衣を着ろ。その傷を見ているこっちも痛くなってくる」

仙蔵が、花の肩衣を頭にバフッと投げてきた。

「はいはい、わかりましたよー」
「じゃあ次花、身長測るから」

花が肩衣を着ると、伊作が呼んだ。

「花、なんでさらし1枚になったの?」
「小平太が裸になってたから、そうした方がいいのかなって」
「小平太をお手本にしちゃダメだよ!」

身長を測っている花を見つめながら、仙蔵は光に声をかけた。

「お前が気に病むことじゃない、と前にも言わなかったか?」
「そうですけど…やっぱり私が悪いんです。原因を作ったのは私だから」
「……最近文次郎とあまり一緒に居ないな。いや、お前が避けてるのか?」
「……………」

光は沈黙する。

「やはり花か」
「誰かを…大切な人を傷つけてまで幸せになりたくありません」

光は強い目をしていた。仙蔵はため息をつく。

「なるほど…お前と花は似ている。文次郎の気持ちがわからなくもないな」

意味深な言葉。光が何かを聞こうとすると、ガタッと天井の板が外れた。
そして、黒い影が上から降りてきた。

「!」
「くせ者…!?」
「あー、大丈夫大丈夫。別に何かをしに来たわけじゃないから」

その人物は手をひらひらさせて、戦意が無いことを示した。

黒い忍装束、包帯で隠れた素顔…

「久しぶりだね、伊作くん」
「あ、あなたは、雑渡さん…!」



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