01
今日から新学期が始まる。
見上げれば桜の木。ひらひらと花びらが舞う。
忍術学園への道をのんびりと歩きながら、花は一歩前を行く文次郎の背中を見つめた。
大きくてたくましい背中
大好きな、背中
「(入学した頃は同じくらいだったのに…)」
ふと文次郎が振り向いた。花の胸がトクンと鳴る。
「忍術学園まで走るぞ」
「ええっ!?」
「これも鍛練の一つだ」
そう言うと、文次郎は「ギンギーン!」とお馴染みの叫びをあげながら走り出した。
「ちょ、待ってよ文次郎!!」
花も急いで後を追った。
文次郎はどんどん先へ進んでいく。
文次郎の背中が、少しずつ小さくなっていく…
「(いつも、届かない)」
いつも私は、文次郎の背中を追いかけてばかりだ。
文次郎との距離はどんどん広がっていく。
「ハァ、ハァ…もんじろ…は、速い」
ゆるい坂道を上り、頂上で花が息を整えていると、下から文次郎の声がした。
「遅いぞ、花!まだまだ鍛練が足りねぇな」
坂道の下で、文次郎がニッと笑っていた。花は急いで坂道を下っていった。
文次郎との距離が一気に縮まる。
やっと、追いついた
「このくらいでへばってたら忍者としてやっていけんぞ」
「あはは、そうだよね。鍛練、頑張るよ」
苦笑いしながら、花は文次郎の隣に並んだ。
こんな私でも、
文次郎の隣に並べる
まだ文次郎の隣で笑っていられる
そう信じても、いいんだよね?
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