09
「花さん、恋愛相談に乗ってくれませんか?」
光からの突然のお願い。
「え?いい、けど…」
いきなりのことに驚きつつも、花は承諾した。
「(…って、今、)」
恋愛相談って言った?
光ちゃんに好きな人ができた、ってことだよね…?
「その人は…とてもやさしくて、自分の夢に真っ直ぐな人なんです。私の気持ち、伝えたいんですけど…それが彼の邪魔をしてしまったら、って思うと……」
「三禁のこと?」
「はい」
花の頭に、1つの可能性が思い浮かんだ。
「誰なのか、聞いてもいい?」
もしかして…
「えっ、と」
光は頬を淡く染める。
「文次郎さん、です」
ああ、やっぱり
また少し、胸が疼いた。
「大丈夫だよ。文次郎は、恋人ができたからって動揺するような奴じゃないから。伝えたいよね、ちゃんと」
わかるんだ、光ちゃんの気持ち
「好きな気持ち」
私も、同じだから
「伝えたいです。結果がどうなろうと…文次郎さんに知ってほしい。私の想いを」
強いな
「伝えなきゃ、きっと後悔するから」
光ちゃんは、強いな
「そっか…そうだよね。応援するから、頑張って。文次郎のことならよく知っているから、力になれると思う」
「はいっ! ありがとうございます!」
それに比べて、私は……
***
夜、鍛練しようと運動場に行くと文次郎がいた。
「今日は小平太と長次はいないんだ?」
「委員会だとよ」
文次郎の隣に立ち、的に向かって手裏剣を投げる。
「光ちゃんもいないんだね」
「ああ」
カカカッ、と手裏剣は的に命中した。
「………まだ告白してないの?」
「!!」
文次郎の投げた手裏剣はあらぬ方向に飛んでいった(あ、伊作に刺さった…)。
「すればいいのに」
「う、うるせぇ!まだ心の準備ができねぇんだよ…」
「光ちゃんのこと好きなのは否定しないんだ」
文次郎は、己と戦っているのだろうか。
色に溺れてしまったら、と
「前にも言ったでしょ、文次郎なら大丈夫だって。恋をすることは、色に溺れることじゃないよ」
花はまた手裏剣を投げる。
「絶対、大丈夫だから」
手裏剣は、的の中心に刺さる。
「文次郎は絶対幸せになるって」
今の私にできること。
「本当か?もし俺が不幸になったらどうすんだよ」
あなたの背中を押してあげること。
「えー…じゃあその時は私が責任を取ってあげるよ」
「なんだそのプロポーズみたいな台詞は」
「あはは、冗談だよ」
それしかできないけど。
「文次郎には…幸せになってもらいたいから…」
「あ?何か言ったか?」
「ううん、なんでもない!
だから早く 光ちゃんに告白しなよ。光ちゃん美人だから、もたもたしてると誰かに取られちゃうよ?」
「……お、おう」
あなたの幸せを願う
それだけは、今の私でもできるから
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