05
ホグワーツでの生活が始まった。
今までの生活とは全く違うものだが、カレンはとても楽しんでいた。同年代の友達とはすぐに仲良くなれ、他の寮の生徒とも打ち解けた。
授業の方は、優秀なハーマイオニーに助けられながらなんとか、という状態だった。
「(勉強、苦手なんだよなー…)」
しかし「変身術」は飛び抜けて上手だった。ハーマイオニーを凌ぐ程だ。
「カレン、変身術が得意なのね」
「そ、そうかな…」
どうして変身術が上手なのか、カレンにはなんとなくわかっていた。自分が生まれつきのアニメーガスなので、変身したりさせたりするのが得意なのであろう、と。
カレンはハーマイオニーと一緒に「魔法薬」の授業に向かった。
「(あの先生か…)」
セブルス・スネイプ。なぜ彼があんなに哀しい目をしているのか、カレンには全くわからなかった。
「………わかんない、な」
「僕もわからないよ」
突然背後から声がしてカレンはハッと振り向いた。ドラコが、わざとらしく何かに悩んでいるような仕草をして立っていた。
「本当にわからないよ。どうしてカレンはスリザリンじゃなくてグリフィンドールに入ったんだ?父上が聞いたらどう思うか…」
ドラコは軽くため息をついた。
「僕の家族はみんなスリザリンなんだ。カレンだけグリフィンドールなんて困るよ」
「? どういう…」
カレンが聞き返そうとしたらハーマイオニーが割り込んできた。
「何か用?マルフォイ」
「マグル生まれなんかに用は無い」
「(また言った…!)」
ドラコは不機嫌そうに自分の席に戻っていった。
授業が終わって談話室に戻ると、掲示板に新しいお知らせが貼ってあった。
「飛行訓練がスリザリンと合同…!?」
「ええーっ!」
カレンとハーマイオニーはしかめっ面になった。嫌な予感しかしない…
木曜日、授業が終わるとカレンとハーマイオニーは校庭に向かった。箒が並んでおいてあり、生徒は箒の横に立った。
「右手を箒の上につき出して…そして『上がれ』と箒に命令しなさい」
マダム・フーチが言うと、みんなは一斉に「上がれ!」と叫んだ。カレンの箒はすぐに飛び上がって、右手に収まった。
全員が箒に股がるとフーチ先生が言った。
「私が笛を吹いたら地面を強く蹴ってください。2、3メートル浮き、それから前屈みになって降りてくるように。それではいきますよ。1、2の…」
緊張か恐怖か…笛を吹く前に、ネビルは地面を蹴ってしまった。箒をコントロールできず、ネビルは上空を危ない動きで飛び回っている。
「う、うわあっ、わあああ!!」
「ネビル!」
考えるより先に体が動いた。カレンも強く地面を蹴り、ネビルの後を追って空へ舞い上がった。
「カレン!」
「戻ってきなさい!」
下から叫ぶ声など耳に入らず、カレンはネビルに向かって飛んでいった。暴れ回るネビルへ、カレンは手を伸ばした。
「つかまって…!」
ネビルはカレンの手をつかもうと片手を放した…そのとき、
「うわああああっ」
バランスを崩して、ネビルは箒から落ちてしまった。カレンは咄嗟にネビルのローブを掴んだが、少女の力で少し太った男の子を支えるのは無理だった。重力とネビルの体重に負けて、カレンも箒から落ちてしまった。
地面に衝突した瞬間、カレンは物凄い痛みと圧迫感を感じた。左手には力が入らず、手首が痣のように青くなっている。カレンの上にはネビルが仰向けで乗っかっていた。しかしおかげでネビルに怪我は無かったようだ。
フーチ先生が急いで駆け寄り、カレンを救出した。
「手首が折れてるわね。それに背中も強く打ってる」
「ご、ご、ごめんねカレン!!」
「ううん、大丈夫。ネビルに怪我が無くて良かった」
ネビルが半泣きでオロオロしているので、カレンは笑ってみせた。フーチ先生に連れられ、カレンは医務室に行った。校医のマダム・ポンフリーに薬をもらい、手首の骨折を治してもらった。大事をとり、今夜は医務室に泊まるように言われた。
「カレン!カレン!カレンは無事なの!?」
ハーマイオニーが物凄い剣幕で医務室にやって来た。後ろにはハリーやロン、他のグリフィンドール生の姿もあった。
「大丈夫だよ。今夜はここで安静にしてなきゃいけないんだけどね」
「酷い目にあったね…あとでネビルをシメとくから安心してね」
「安心できないよ!」
ハリーがあまりにもにっこり笑うので、ロンが怯え半分で返した。
夕食の時間になり、お見舞い客は全員医務室を出ていった。カレンが、マダム・ポンフリーが持ってきたマフィンを食べていると、医務室のドアが開いて誰かが入ってきた。ドラコだった。
「ドラコ……どうしてこんな時間に?」
何をしに来たのだろう、とカレンは少し不思議そうにドラコを見た。ドラコはカレンのベッドの脇にある椅子に座った。
「この時間なら他に誰もいないと思ったんだ。カレンに会いに来たのに、グリフィンドールの奴らやマグル生まれと顔を合わせたくなかったからね」
少し言い方が気になるが、カレンは、ドラコが純粋にお見舞いに来たのだと知って驚いた。
「怪我、大丈夫かい?」
「うん。今夜はここにお泊まりだけど」
ドラコはじっとカレンの左手を見つめていた。怪我の具合が気になるのだろうか…
いつもとは少し違うドラコに、カレンは戸惑った。
「あ、あの、お腹すかない?よかったらマフィンあるけど…」
カレンの言葉を無視し、ドラコは身を乗り出した。じっとカレンを見つめ、何か言いたそうな顔をしている。
「(か、顔が近い…!)」
カレンがあわあわしていると、ドラコはふっと笑った。
「ついてるぞ」
指でカレンの口元を撫でると、チョコがついていた。
「あ、」
「元気そうで安心したよ。また明日、魔法薬で会おう」
ペロッと指をなめ、立ち上がるとそのままドラコは医務室を出ていった。
「……!?」
カレンは少し頬を赤くして、今ドラコが出ていったドアの方を見つめていた。
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