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「ロベルト様がロベルト様であろうが無かろうが、私が仕えるべき主人は目の前に居る貴方、ただ一人ですので」

「アル……」

「何処に行こうとも、例え誰であろうとも、私にとってはロベルト様がロベルト様ですから」




迷い無くはっきりと語られたアルベルトの想いに、ロベルトは何かが喉をグッと逆流してくるような気がして思わず声を詰まらせた。
油断すると熱い物が内側から込み上げて来そうで、ロベルトは寸手の所でそれを抑えると、誤魔化すようにアルベルトからふいっと顔を背けた。




「……言っておくけど、俺に着いて来たって給料は払えないからな?俺は今から無一文になるんだから……」

「十分承知しております」




……―――ほら、ロベルト。
ちゃんと、ご挨拶なさい。




「……勝手にしろよ」

「ええ。勝手にさせて頂きますよ」




あれから、何年の月日を共に過ごして来たのだろうか。
ロベルトの脳裏を過る、幼い頃の記憶。
今の自分を形成する上で掛け替えの無い、大切な記憶。
その始まりの日。




『ほら、ロベルト。ちゃんと、ご挨拶なさい』

『今日からお前の教育係となるアルベルトだ。仲良くするんだよ?』




叱られて、叱られて、
怒鳴られては叱られて。
追い掛けられて、捕まって、
捕まったなら、また叱られて。




『アルベルトと申します。これから宜しくお願い致します、ロベルト様』






……―――沢山、愛されてきた。





「っ、……勝手にしろ……」




ロベルトはアルベルトと共に勝手口から表に出ると、車庫に駐車してある愛車の後部座席へと乗り込んだ。
乗り込んだならシートに身体を突っ伏して、出来るだけ低く頭を隠した。
エンジンが掛かり、ゆっくりと走り出す車体。
向かう先に待ち受けるのは、人垣と化した報道陣だ。




「頭を隠してなさい!いいですか、揺れますよ!」

「アル!勢い余って誰か跳ねたりしないでよ?!」

「馬鹿な事を仰有ってる暇があるなら、歯を食い縛ってなさい!参りますよ……突っ込みます!」




アルベルトがアクセルを踏み込み、車は裏門を抜けて車道へと飛び出した。
途端、カメラを構えた報道陣達が右からも左からも、前方からも車を囲みに群がって来る。
蟻のように集る報道陣達をどうにかして擦り抜けた車は、そのまま国道まで辿り着いた。
だが、息を吐く暇も無いとは、此処からの事を言うのだろう。




「撒いた?!」

「何を言ってるんです。問題はここからですよ。ご覧なさい。後続者8台、全て報道機関の車にパパラッチです」

「ええ?!あんなに……」

「飛ばします。何処でもいいから、しっかり掴まってなさい!」










……―――そうして、この日。
アルタリア城から一人の王子が忽然と姿を消したのだった。
















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2014.11.07




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