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「茉莉、手出して?」

「あ…、おまじない?」

「おまじないはついでね。俺がこれを付けてる茉莉を一番乗りで見たいだけ」

「ふふっ、……うん」




手を差し出したなら肌にちゃらっと触れる、ひんやりとした感触。
ロベルトは茉莉の手首にブレスレットを付けると、えっへん顔で微笑んだ。
手首から垂れ下がる花のチャームはゆらりと揺れて、雨上がりに照り出す陽の光りに煌めいている。




「……可愛いっ。ありがとう、ロベルト」

「うん、可愛い。やっぱり茉莉に似合ってる。おまじないも掛けたし、これでよしっと!」

「やっぱり掛けたんだ、おまじない」




細やかなロベルトの独占欲が嬉しくて、茉莉がくすくすと笑顔を溢していたなら、突然「あ!」と大きな声が上がった。
何やらロベルトがテンション高く空を指差している。




「ロベルト?どうしたの?」

「茉莉、ほら見て。あそこ!」

「……わぁ、虹」




……―――見上げた先、
そこにあったのは、ソーダ色の空に引かれた一筋のカラフル。
放物線を描くグラデーションが、大地を繋ぐように端から端に弧を浮かび上がらせている。




「凄い…!こんなに綺麗な虹なんて久し振りに見たかも……。あ、ロベルト見て!虹がもう一個……二重になってるよ!」

「ホントだ!くっきり見えるや。やっぱり、ここに来て正解だったかも」

「もしかして、ロベルトも見たいって言ってたのって、この虹の事?」

「うん。予報で一瞬晴れ間が覗くって言ってたから、一か八かの賭けだったけど、まさか本当に見れるなんて思わなかったよ。俺もちょっとビックリしてる」

「それって凄いね。天気がロベルトに味方してくれたって事でしょう?」

「うーん、って言うか、俺と茉莉の二人に味方してくれたのかも。だって、ほら……」




虹は二重に、
円い放物線を空に描く。
寄り添う二つの曲線は、雨上がりの空に鮮やかに色を引いている。




「ペアの虹なんて滅多に見れなくない?きっと、一つは俺で一つは茉莉で……俺達二人分の虹を空がプレゼントしてくれたんだよ」

「二人分の虹?」

「何だかペアリングみたいじゃない?あの虹を摘まんだら、もしかして茉莉の指にぴったり嵌まるのかも」

「ふふっ、あんな大きな指輪、ちゃんとぴったり嵌まるかな?」

「勿論。俺が茉莉に嵌める指輪なら、サイズは絶対にぴったりでしょ?」

「……うん!」








茉莉の手首でブレスレットのチャームがちゃらりと音を立てる。
ふっと近付いてくるロベルトの顔に、茉莉が彼の胸へと寄り添ったからで―――……。

雨、ときどき晴れ。
水彩画のように青を伸ばす空には、七色のカラフルが仲良くペアで浮かんでいる。
雨は上がり、傘はもう必要は無い。
けれど、ロベルトはもう一度傘をぱんっと開いて頭上に花を咲かせた。


そうして、こっそりと青空の下。
相合い傘の中で二人、誰にも見られないように隠れてキスを交わすのだった。













一方、その頃。
街中を駆け回ったアルベルトは、城に戻るなり発信器の精度について不満を口にしていた。
夕方のニュースに目を通しながら。




「全く、あともう少しという所で取り逃がすとは……。発信器の改良も必要だな。例えロベルト様に取り外されても、半径3キロ圏内では反応するような、何か特殊な……」

『皆さ〜ん。夕方のお天気の時間でぇす。今はすっかり晴れてるお天気も、これからは今朝の予報通り土砂降りの雨に逆戻り!』

「……」

『皆さんが風邪を引いたら私、困っちゃう。びしょ濡れにならないように、今日は夜遅くまで傘を手離しちゃ嫌よ〜ん?うっふん!』




「うっふん」と、
とうとう語尾に付け加えたお天気キャスターの、その無駄にセクシーな予報にアルベルトがジッと見入る。




「何故、天気予報にボディコンシャスな衣装で登場する必要が……?」




お色気たっぷりに画面に映るキャスターに、今朝のロベルトとの会話同様、アルベルトは眉を寄せて首を傾げた。
だが、理由はどうであれ。
ジッと画面に見入る彼は、やはりロベルト曰く立派な中高年層の一人に違いない。

















20140613 end.


梅雨入りしたので、ロベルトと相合い傘デートをしたいが為に勢いで書いてみました。ハァハァ!

ちなみに、
話に挟みたくて挟めなかったボツネタが。
カタツムリとナメクジが似てるよねっていう話。笑

とにかく、ロベちゃんと一緒なら、どんな天気だってハートは晴れなのです!///






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