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「気付けば、俺の中で君の存在は大きくなっていた」




彼女曰く、
先の良く尖った三日月が美しく輝きを放つ、澄み切った夜空。
バルコニーから眼下に望むのは、まるで星屑のように拡がる家々の灯り。
だが、その一つ一つの灯りの全てが星の煌めきにも勝る尊さだ。
王子として、この灯火を一生涯掛けて守り抜く。
その隣に、君もいて欲しい。




「君に傍にいて欲しいと思う。この感情を何と呼ぶのかは解らないが……」




それまで、腕の中で黙って話を聞いていた彼女が、ふと顔を上げて見詰めてくる。
少し得意気に、然も自信有り気な表情を浮かべて、彼女はくすりと微笑った。




「レオナルド様に教えてあげましょうか?」

「何を?」

「いいですか。きっと目から鱗が落ちちゃいますよ?今から私が言う事をちゃんと聞いてくださいね?」

「だから何の話?」




何の事やらと、そう首を傾げたなら、「えっへん!」とでも言わんばかりに、自信たっぷりに彼女は言う。




「レオナルド様のその感情のお名前です。それは、きっと……恋ですよ」




得意気に、しかも勝ち誇ったように言い切る、彼女の笑顔に―――……。




「……え。あれ?レオナルド様?」

「………」

「そんなに笑う所でした?」

「いや……」

「もう!そこは普通なら、"本当だ。僕は君に恋してる"とか何とか言ってですね、ムード良く、こう………きゃっ?!」




不覚にも、泣いてしまいそうになった。




「ああ、本当だ……君に恋してる。……好きだよ、茉莉」











三日月に手が届くのならば、
あの美しい尖りの間にダイヤモンドを埋めて輪にしよう。
それを君に贈ろう。




きっと、良く似合う筈だ。
















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