…どれくらい時間が経過したのか。
真剣に悩んでいると、コツンと頭を小突かれた。
「痛っ。あ、清田さん」
「まだ決まんねぇの? ったく…優柔不断」
呆れ顔の清田さんが私の持っていたネックレスを棚に戻す。
そして彼が新たに手にしたものは上品な黒い蝶のデザイン。私の胸元へ合わせると、フッと口角を上げた。
「これにしとけ」
「え…そんな大人っぽいの似合わないですよ」
「つけてみなきゃ分かんねぇだろ。お前ただでさえガキっぽいんだから、身につけるもんくらいマシなの選べよ」
「そ、そんなにガキっぽくないです!」
私がむくれるのを見てククッと笑う清田さん。そしてポンと頭に手を乗せる。
「そういうところがガキ」
「う…」
それから買い物を済ませた私たちは、たわいのない会話をしながら残りのデートを楽しんだ。
その日の夜。
リビングのソファーで映画を見ていると、桜庭さんがやってきた。
「おーっす。何見てんの?」
「去年上映されたラブストーリーですよ」
「へぇ…隣失礼しま〜す」
そう言って桜庭さんは腰を下ろすと、画面に食い入るようにして少し身を乗り出す。
ちょうど話の山場であったため、私たちは黙って映画の世界に没頭する。
しばらくの間一緒に映画鑑賞していると、不意に横からの視線を感じた。
桜庭さんを見ると、視線は私ではなく胸元のネックレスに向けられていた。
「あの…?」
「美月ちゃんにしては珍しいのつけてんね。いつもは可愛い系なのに」
「あ、えと…清田さんが選んでくれたんです」
躊躇いがちに伝えると、ニコニコしながらネックレスに手をかける桜庭さん。
急に手が触れてビクッとしてしまう。そんな私に気付いていないのか、桜庭さんはのんびりとした口調で話を続ける。
「なーるほどね。創ちゃんて意外とセンス良いんだ。すっげー似合う!」
「あ、ありがとうございます…」
(誉めてくれるのは嬉しいんだけど、ちょっと近すぎじゃ…)
肌に桜庭さんの吐息がかかり、体が固まる。気を紛らわそうと画面に目を向けるが、運悪く濃厚なキスシーン…
軽くパニックに陥りそうになった時、プツンとテレビの電源が切れた。