早速カットしたスイカをお皿に乗せて戻る。
二人で縁側に並んで「いただきます」と挨拶して。シャクっとかじれば程よい甘さ。時折風鈴が涼しげな音を奏でる。
これぞ夏休みって感じだ。
「おいしい!」
「うん、丁度良い甘さだね」
それから私たちは、食べながら互いに学校のことや仕事のこと等を話して過ごす。
やがて…
「和人さん…?」
会話が途切れたと思ったら、肩に重みがかかる。和人さんが私に甘えるようにして頭を預けていた。
年上の彼にしては珍しい行動に、胸がトクンと高鳴る。
「ほら…アイツらいないからさ。少しだけ…こうしていていいかな?」
「はい、私の肩で良ければ…」
「ありがとう…」
そう言って目を閉じた和人さんの顔は、心配になる程疲れているように見えた。
(あまり寝てないのかな…)
常日頃、部屋に篭って夜中まで仕事に励んでいる和人さん。そんな彼に何かしてあげられることはないのだろうか。
一番は十分な休養。となると…
(今日の夕飯、私が作ってあげよう。その間和人さんには休んでもらって…)
そんな風に考えていると、和人さんが体を起こして背伸びする。
「もう良いんですか?」
「うん。あまり良い歳した大人が甘えてばかりなのも恥ずかしいからね」
ハハッと笑って立ち上がろうとするから、私はついその腕を掴んだ。
「美月ちゃん?」
「……和人さんは一人で頑張りすぎです」
「え?」
「疲れてる時に無理して笑わなくて良いじゃないですか。私、彼女ですよ? 和人さんにとってはまだまだ子供で頼りないかもしれないけど…もっとたくさん甘えてほしいし、弱い部分も見せてほしいんです」
そう告げると、和人さんは一瞬目を見開いたけど、肩の荷が下りたように軽く微笑んだ。
そして、やんわりと私を抱き締めてくれる。
「俺は幸せだな…美月にこんなに想ってもらえて」
優しい響きと心地好い温かさ。
なんだか不思議だ。真夏にくっついたら暑いはずなのに、彼の体温は全然嫌じゃない。
ううん、むしろずっとこうしていたい。
ねぇ、和人さん。
これからもいろいろ教えて?
愛することの喜びと、愛されることの幸福を。
(時間が止まってしまえば良い…)
*End*
→あとがき