紫煙と祈り


薄空のベランダにでて
煙草を吸う
紫煙の立ち上ぼるのをみつめて
どこからか聞こえる
子猫の鳴き声に耳を傾ける
 
隣りの屋根の上に
優雅に佇む
黒い子猫が一匹
 
その紫煙が気になるのか
いつまでもいつまでも
眺めている
 
独りぷかりと煙を吐くその様を
まるで不思議なものをみるかのように眺めている
 
限り無く優しい時間が流れる
 
 
 
ささくれだった心に訪れるのは
哀しいくらいの静寂と
狂いそうな歓喜
 
 
 
いつまで
こうして過去の呪縛に縛られ続けるのか
 
終わりない闇の中に
押さえ切れない慟哭に身を任す
 
 
 
 
 
もしも
祈りが昇華されるなら
一体何を願うだろう
 
 
 
現実の暗く渦巻く世界から目を背け
自己逃避の
限り無く甘く煌めく世界を
ただぷかりぷかりと
漂っている
 
未来もまるで見えず
暗澹たる闇を
たった一筋の光を求めて歩いている
 
頬を伝うのは
ただの水
 
涙はとうの昔に枯れ果てて
祈る心も挫かれた
 
 
 
 
 
一体何が残ったのだろう
 
 
 
 
 
この無意味な事象の跡に
一体何が・・・
 
ただただ漂う
紫煙の行く先を
子猫と同じように
不思議なものをみるかのように眺めている
 
 
 
 
 
もしも
祈りが昇華されるなら
そう
この小さくて
息苦しい世界の終焉を祈ろう
 
安息の地へ
歩いて行けるような
屈強な心を祈ろう
 
もう二度と
傷つけられないような
手練手管を祈ろう
 
そして
ダイヤモンドよりも固い
鋼鉄の剣も跳ね返すような
そんな鎧を着込もう
 
 
 
 
 
そして
一体何が残るのだろう
 
 
 
 
 
紫煙が
ぷかりぷかりと
薄空に消えて行く



[ 7/13 ]

[*prev] [next#]
戻る
[しおりを挟む]



「#お仕置き」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -