ホスピタル・エナジー side在有


 その日、僕は病院にいた。

 今まで僕は風邪一つひいたことなかったのに、3日前から熱が下がらなくて、 でも心配かけたらあかんと思ってできるだけ部屋にこもってたのにとうとう桂也さんに気付かれて、お兄ちゃんにバレちゃった。

 お兄ちゃんは大慌てで僕を病院へ連れてきてくれたけど、正直僕は初めて連れてこられた大きな病院が怖くて怖くて腰が引けてると思う。

 待合いでぐったりしながら待っているけど当然なかなか呼んでくれなくて、お兄ちゃんは付いていてはくれるけど、時々電話が入るようでせわしなく病院の外へ出て行ってはまた帰ってくる。それがすごく申し訳なくて、僕はちっちゃくちっちゃくなってお願いだから早く終わってと延々と考えてた。

 だけどそういう時に限ってなかなか呼んでくれないもので、ついついお兄ちゃんの顔色を伺うように覗き込むと、お兄ちゃんは

「大丈夫か?」

と、その大きくて暖かい手で頭を撫でてくれる。

 熱で潤んだ目で力なく笑っては見たけど、お兄ちゃんはますます心配そう な顔をするばかりで思わず

「ぉ、兄ちゃ、ん……ごめん、なさい……」

と呟けば、何も言わずにぐりぐりと頭を撫でられた。

 ようやく名前を呼んでもらって診察室に入った僕は、上半身を見せてと言う先生の言葉におろおろと後ろに付いてくれてるお兄ちゃんを振り返った。

 見せたない。

 お兄ちゃんにも見られたない。

「在有、大丈夫や。 一瞬や」

 先生が無理やり服を上げようとして、

「っっやっっ」

と思わずその手を払ってしまう。

「っ、ご、めん、なさい……」

 先生の戸惑う顔とお兄ちゃんの困惑した顔が、ますます僕を追い詰める。

 だって……僕の体には、まだ消えない無数の痕跡が残ってる。

 誰にも見られたない。

 先生の延ばしてきた手が、いろんな亡霊を引き連れてくる恐怖に突き動かされた僕は無我夢中で暴れて泣き叫んで、ふと暖かい腕に抱きしめられてることに気付く。涙でぐちゃぐちゃの顔は見せられへん。だけどその暖かい温もりを手放したない。

 僕は唐突に現実逃避する方法を選んだ。

 意識を手放すという荒療治で……



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