第5章 05


【軍嗣side】

 正直、俺たちはどうやって在有と向き合えばいいのか分からなかったんやと思う。甘やかしてあいつの好きなようにさせて、過保護に干渉して。だけどどれもこれもあいつを追い詰めているような気がしていた。

 千条が来てからは外に行く回数も増え、少しづつ表情も豊かになってきたので安心し始めていた。悪いことから守るために閉じ込めておく方がいつまでも過去のことが残るんやなと考えを改めた矢先のことだった。

 どう知り合ったのかは知らないが、五条と府島が繋がり、庄能も含めて徒党を組み在有を付け狙っていると情報を仕入れた。自分たちのしたことを棚に上げ、自分たちの今の現状は在有のせいだと豪語していると聞いた時ははらわたが煮えくり返るような思いだった。と同時に、外に出ることが多くなったことに顔を顰めた。あいつらに接触した時に在有がどうなるのか、想像もしたくなかった。せっかく精神的に落ち着いてきているのにと思った。

 仕事も早々に切り上げ久しぶりにゆっくり在有と過ごすかと家について車を降りた時、

「助けてっ。 お兄ちゃん、かなちゃんを、助けてっ」

と声が聞こえた。

 振り向いた先には必死にこちらに駆けてくる在有がいて、もがいてもがいて今の現状を打破しようとするかのようにもう一度

「かなちゃんを助けてッ」

と叫んだ。俺は我に返り在有に向かって走った。と同時に壱善と古賀に指示を出し、崩れるように倒れた在有を抱き留めた。

「在有、もう大丈夫や。 よう頑張ったな」

 あんなに大きな声を出して、あんなに必死になって走って、今まで俺たちがどうしたらいいか分からなかったことがまるで嘘のように自分から前を向こうとしている。意識を失った在有を抱き上げて、

「ほんまによう頑張ったな」

と囁いた。





 千条は、確かに怪我をしていた。それ以上に五条たちは瀕死の状態だった。以前千条のことを調べた時に傷害で入っていると言うのは知っていたが、こいつはある意味やばい。ぼこぼこどころかとにかくえげつなかった。もっとも、相手は刃物を持ち出していたし。三人以外にも数人引き連れていたのだから何とか正当防衛に持って行きたいが……

 俺はとにかく千条を登録していなくて良かったと思った。組の抱える弁護士にあとは任せ在有についた。

 こいつが立ち向かおうとしているのだから、俺も一緒に立ち向かおう。排除するやり方ではこいつが自分の力で歩いていくことはできないだろうから。色々な意味でまだまだ幼い在有といつまでも共にあり続けるために、その寝顔に誓った。

 在有が千条に会いたがっていたから、奴が出てくる日に車で警察に向かった。弁護士も随分苦労はしたようだが、なんとか正当防衛に持って行った。五条たちも随分と悪いことに手を出していたようでただ過剰に殴りすぎた千条よりも、奴ら三人逮捕した方が実りが大きかったようだ。こちらからしてみれば不幸中の幸いだ。

 千条は殊勝な態度で謝りはしたものの、けろりとしたもので、俺はこいつを古賀か壱善あたりに付けて勉強させた方が組の為にもなるかとそろばんを弾いていた。

 ふと、なんだか可愛らしいことを言っていた在有がいつまでも純粋にいれる様に願うが、10年も経てば過去のことをうまく昇華して元気になっているだろう姿も想像につく。

 いずれにしても俺が在有と離れると言う選択肢はないのだから、在有が快適に過ごせるようにゆるぎない基盤とやらを作っていこう。



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