作戦会議 等々力央二の場合


 試験期間中、二人の事を考えてはテスト勉強の手が止まり、こんなんだったらバイトに行く方がましかとわざわざ休みの日にまでバイトに行ったり、どっちつかずな気持ちのままで時間だけが過ぎてしまった。

 そんなわけだから当然結果もよろしくない。

 くよくよ悩んでるんは性に合わんしと何度も思ったけど、だからと言って簡単に煌紀に気持ちを伝えることもできなかったら、篤郎に煌紀の事をどう思っているのかを聞くこともできへん。自分の意外におちゃらけてへん所にびっくりしてるくらいや。

 試験が終わって通常の生活に戻ってもそれは変わらなくて、馬鹿な事を言ったりして極力考えないように努力をしてみるけれど、やっぱり煌紀と篤郎が二人で話しているのを見ると、いろいろと考えてしまう。

 離れていたらどんな話をしているのかもさっぱりわからないし、遠目に見ても楽しそうで、なんだか間に入って行けないような気がする。

「はあっ?」

 突然普段滅多と聞かない煌紀の素っ頓狂な声に、クラス全体がびくっとしたように感じる。決して大きい声ではないが、いつも冷静な人の慌てた声と言うのは案外耳に入るものだ。

 俺はくるりと煌紀と篤郎の方を振り返った。にやにやと笑う煌紀に、篤郎が拝むように手を合わせている。見てはいけないものを見てしまったような背徳感に苛まれる。目を背けるものの、気になって気になって仕方がない。

 視線は別の方、意識は二人。と思ったら又突然に、ぶっふと奇声を上げて煌紀は盛大に咽た。

 気になってたけど、こうなってくると

『あいつらいったい何してんねん』

と呆れてくるわけで、気にしているのが馬鹿らしくなる。

「央二っ」

 気にしなくなった途端に、篤郎に呼ばれた。

 何? 今更俺? そんな疑問を抱えながら二人に近づくと

「央二、悪いけど料理教えて」

と言われる。料理? 篤郎が? またなんで急に?

 次から次へと疑問が湧くが、深く追求する事も無く

「いいけど」

と伝えた。念とも思っていない顔をしているつもりだったが、よっぽど訝し気に篤郎のことを見ていたのか

「俺、瑛二に思いを伝えることにした」

と一言、言われた。

「はあ?」

なんだかよくわからないままに、とりあえず何時がいいのか聞き、日程を調整をするが、頭の中は瑛二って誰? で一杯だった。全然思い当たる人もいず、て言うか煌紀のこと好きだったんじゃねえの? と思ったり、パンクしそうになった俺は

「ところで、瑛二って誰?」

と聞いた。

 一瞬時が止まり、篤郎は目を泳がせ、心持赤面して、煌紀は噴き出すように笑い出した。

「いや、だから誰? 俺知ってる人? よなあ、篤郎の顔見たら」

「匂坂」

 煌紀が咽ながら、俺の良く知る人の名前を挙げた。

「え? 匂坂さん? あの人匂坂瑛二って言うんや、へえ」

「そこかよ、突っ込むとこ」

 びっくりした。いつの間に篤郎と匂坂さんそんなことになってたんや。はあ、まだまだ俺も甘いなあ……



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