作戦会議 藤嶋篤郎の場合


 期末テストの結果は思いの外よかった。今までに見た事も無い様な点数を取ったものもあり、なんだやればできる子だったんじゃんと自画自賛してみたり、これで卒業の進路も白紙に戻ったわけだしと、密かにホッとしたり。

 試験期間中、いろんなことを考えるのが嫌で、ひたすら勉強に集中した。今までだったら瑛二の都合に合わせて時間を作っていたから、それもなくなると放課後、家に帰ればやることがなかった。央二や煌紀みたいに打ち込む物もないからそれに時間を取られる事も無い。人付き合いを密にしてきたわけでもないから友達と遊びに行こうと誘われる事も無い。そうなると、しょうがないから勉強でもするか、試験中だし、となるわけで、自分がいかに瑛二を優先してきたかと言うことが良くわかった。

 煌紀の事が好きだと思っていた。

 だけど、失くすかもしれないと思った時、煌紀がいなくなることを想像するよりも、瑛二がいなくなる方が辛かった。

 じわじわっと瑛二がいないことに耐えられなくなってきた俺は、テスト前に煌紀が言っていたように、クリスマスに決行することにした。

「なあ、煌紀」

「あ?」

「瑛二に思ってること言おう思うんやけど……」

「いんじゃね?」

「央二貸して」

「はあっ?」

 俺の申し出に、いつもは冷静な煌紀が素っ頓狂な声を上げた。耳ざとく聞きつけた央二がこちらを振り返ったが特に何も言ってこない。

「いや、せっかくクリスマスやし、どうせいつ帰って来るかわからん瑛二なんやから、料理でも作って待っとこうかなあ、て」

「乙女やな、篤郎くん」

 にやにやと笑う煌紀に、自分でも実際なかなか乙女志向だと思っていた俺は、さらりと無視して、というか無視せんと恥ずかしいから、

「頼む」

と拝んでみた。

「俺じゃなくて央二に言ってやれよ」

「いや、クリスマスやし、煌紀が嫉妬せんかなと思って」

 ぶっふ、と飲んでいたコーヒーを吐き出しそうになるのを堪えた煌紀は盛大に咽た。

「……なんで、お前に嫉妬せなあかんわけ? 匂坂が好きやあって全身で言ってるお前に。 それ、俺がめちゃ空しい」

 うん、煌紀はどこまで行っても煌紀やった。

「ほんま、老成してるよな」

「大人や言うてくれるか、篤郎くん? もしくは心広いか」

「自分で言うてたら世話ねえよ、央二っ」

 ぽかりと一発頭を殴って、俺は央二に声を掛けた。俺の頭を気安く叩くんはお前ぐらいなもんやとぶつぶつ言ってる煌紀にちろりと目をやり、こちらに来てくれた央二に

「央二、悪いけど料理教えて」

と言った。

「いいけど」

 訝し気に俺を見る央二に

「俺、瑛二に思いを伝えることにした」

と伝えれば、

「はあ?」

と言いながらも日程を調整してくれる。が、最後に一言、爆弾を投下した。

「ところで、瑛二って誰?」



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