定期考査 等々力央二の場合


 全力投球した文化祭が終わって日も経った。

 今の俺は燃え尽き症候群ってこういうこと言うんやなあってくらい燃え尽きてしまって、正直目前に迫っている期末テストどころの話やない。

 もっとも、別に燃え尽き症候群にならんかっても、元々バイトに明け暮れて、いつだって試験対策なんてしてへん。今日も学校では燃え尽き症候群全開で、終了のチャイムと共にバイト先に走る。

 文化祭の時にいろいろ工夫して勝ち取った売上一位に、俄然仕事に対しても面白さを感じるようになった俺は、大学に進学する気はないんやから、周りから比べたらずいぶんと暢気や。

 その点煌紀は大学進学希望やし、あんまり考えてへんみたいな篤郎も進学するやろうから、何となくちょっと寂しい気もする。

 篤郎は文化祭が終わってからちょっと変や。

 変て言うか悩んでる?

 心配はしてるけど、俺は人の悩みの相談に乗るんは苦手や。別に悪ふざけするわけやないけど、どうしても

「くよくよすんなって」

の一言で片づけてしまうところがあるから、そういうんは煌紀の方が向いている。うん、適材適者や。 ……言ってってちょっと悲しい気ィするけど。

 何に悩んでるんかはよくわからへんけど、なんか進路の事とかじゃないっぽい。

 篤郎、進路のことなんかほとんど悩まんで、なるようにしかならんみたいなところあるから、あそこまで意気消沈して真剣に悩んでるんは絶対何か違う理由のはずや。

 それもなんか俺の苦手分野っぽい臭いがプンプンする。

 机と友達になったり文化祭で仲良くなった奴らと騒いだりしながら篤郎を観察してたけど、窓の外ボーっと見てため息なんかついてる。

……煌紀の事でも考えてんのかな……

 自分が煌紀の事好きやから、そう思ったら胸がギュッとしまった感じがする。昔っからの付き合いで、幼馴染で、一緒に馬鹿やったりやんちゃやったり、大切な友達やのに、なんで同じ人好きになってしまったんやろ。

 他にもいくらでも人間いんのに、なんで仲間内で嫉妬してんのやろ。

 この関係を壊したくないけれど、でも近い分、醜い嫉妬心がにょきにょきと出てくる。

 なんていうか、ジレンマ……

 これでどっちかが付き合ったとかなったら、もう友達でいれやんようになるんかな…… そんなんなりたくないし、自分の気持ち、絶対悟られやんようにせんとあかんな。

 当分は期末テストでごまかせそうやけど、結構、篤郎敏いからなあ。

 こんなにテスト期間が嬉しく思ったことって、多分今までに一度もない。



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