文化祭 藤嶋篤郎の場合


 文化祭は堂々一位で大成功やった。

 内装担当の気合の入り方も半端やなかったし、当日の俺らの和装も結構好評やった。でも一番の功労者は央二やな。

 文化祭前日に材料が手元に揃い、とりあえずは予行練習と試作品作りをしたらしい調理担当の奴ら。試作品作りと言っても大半はジュースをグラスにいれて色つきの細いストローを入れるだけだったり、フルーツ(しかも丸ごとは扱いに困る男ばかりやからカットだったり缶詰めだったり)の盛り合わせや混ぜて入れるだけのポンチといった、調理とはとても言えないようなそんな代物やったらしく、挙句の果てには出来合いのスポンジケーキに生クリーム塗りたくってケーキもどき見たいな、

「それ、出すんかよ」

と思わず突っ込みたくなる様な有様に央二がなんやよくわからんけど、キレた、らしい。

「ちょっと待てっ!! お前らそんなんで1位取れると思ってんのかよ」

と言う央二の怒鳴り声が内装の最終仕上げをしていた俺らの元にも届いて、

「何叫んでるんや、あのバカ」

と何事かと顔を見合わせながら言う煌紀に

「そんなん、いつものことや。 今に始まって事ちゃう。 早よ仕上げやな間に合わんようになるで」

と呑気に切り上げた。内装を仕上げたら内装組の大半は衣装の最終確認をせなあかんから気が急っている。用意をし始めたときはまだまだ時間はあるとかなり凝ったことをしてたけど、さすがにここ最近は見た目に響かん程度に雑になってきている。それでもなかなかな仕上がりやと思うし、実際これ、終わった後に潰してしまうんかと思えば切ない。

 それも今年限り。来年になればここまで文化祭に熱くなってる暇はないやろう。数人で順番に店番ができる屋台風の飲食店が例年の3年の出し物や。だいたいがたこ焼きやったり、焼きそばやったり、お好み焼きやったりする。それが分かってるから今年の出し物には気合が入るわけやし、実際1位を取るのは手探りの1年より経験有りのこなれた2年と相場が決まっている。屋台風はコンスタントに売れるし、ガキの頃はテキヤになるのが夢やったから来年は来年で個人的には楽しみやけど。

 そして、当日。

 俺ら内装組は央二にしてやられた。

 メニューがありえへんくらいに凝っている。和風ホストクラブと言うだけあって、メニューもそこはかとなく和が感じられる仕様になっていて、だけど出てくるものは相当お洒落に様変わりした飲み物だったり小さなケーキだったり、比較的万人受けするものでコストも抑えられている。何よりも可愛かったり可愛かったり可愛かったり(いや、それ以上の言葉が見つからへん)とにかく女の子がキャーキャーと喜んでいた。挙句の果てには一日の内に数度足を運んでくれる人もいたり。楽しさ以上に何故か焦燥感に苛まれた。

「やられたな、煌紀」

「ああ」

「やっぱり央二はそういう方面進むのがいいんやろな」

「進路希望もそうやしな」

「お前一人抱え込むなよ」

「あ?」

「家のこと」

「ああ、いいんだよ。 俺がそう決めてんやから」

 ああ、嫌になる。どいつもこいつも老成しておよそ高校生らしくない。それともあれか、俺がお子ちゃまなだけか?

 何も見えない先に悩む小ささを実感した文化祭となった。



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