文化祭 七竹煌紀の場合
文化祭の結果、俺らの出し物は堂々一位を飾った。
飾ったのは飾ったんやけど、いろいろな意味で不本意なと言うか癪な結果とも言える。この結果に一番貢献したんはホストクラブに見えるように少しでも豪華絢爛に見せる努力をした内装担当でもなければ、いかにもホストぽく化けれるやろうと選ばれたちょっとばかり身長の高い俺らでもなく、多分央二や。
内装を手伝っていた当日ホスト組の俺ら、もちろん篤郎も入っている。衣装さえ決めて段取りしてしまえば他にする事も無いわけで、なんだか凝った造りに内装デザインした奴らに駆り出され、そこそここき使われる羽目になった。
「お前さあ、なんでこんな面倒くさい造りにしようと思ったわけ?」
どうすれば手抜きができサボれるかを考えていた俺の心底面倒くさそうに放ったセリフに、こいつ大丈夫かよと思うようなくらい身を乗り出して来て熱弁奮ってくれた。暑苦しい。
「煌紀……お前には俺らの気持ちはわからんやろうなあ…… 文化祭やぞ。 校内に女もわらわらとくるわけや。 そ、こ、で、とにかく女をこの店に呼びこまなあかん。 呼び込んだらもしかしたらあわよくば超かわいい子とかむらむらセクシー系のお姉さんとかと知り合えるかもしれねーじゃねえかよ!! こんなほぼ男子校みたいな学校で楽しみって言ったらそれだけやろがっ、なあ、お前ら」
「おうよ」
「……青春だな?」
「煌紀…… 俺はつくづくお前が心配だよ。 そんな老成した態度で大丈夫かよ。 央二みたいにアホになれとは言わねえけど、もうちょっとこう、文化祭だぜ、ヤッホーみたいな態度になれねえわけ?」
「いや、お前充分アホやわ」
隣では篤郎が馬鹿笑い、遠くからは央二の地獄耳が
「お前ら今俺の悪口言ったやろ」
と叫んでいる。カオスや。
で、結局そんなアホなノリの奴らに押されて豪華絢爛な内装になったわけや。本当こいつらまとめて大工とか鳶とかになるつもりかよ。日曜大工の域ははるかに超えている気合いっぷりやった。ああ、でも誰かほとんど学校来んでエクステリア系の会社に入り浸ってる奴おったけ? バイト言ってたけど、あいつは多分そこに就職するつもりやろな。お蔭で教室のドアは立派な門構えに、教壇付近は庭になっている。
文化祭の日まで授業がないわけやないんやけど、はっきり言ってこれ教室もう一個用意してくれやな授業どころやないやろな。
それくらいにはりきってた内装やけど、央二の凄さに全部持ってかれて、当日は相当意気消沈しとった。いや、女は期待通りと言うか期待以上に大量に来てたけどな。もちろんまずは内装の凄さに結構驚いてたり、喜んでいたりしたからあいつらの思惑通り心をぐっと掴んでたと思う。
そして俺らのほぼ着物の和装ホストにこれまたキャーキャー言われ、でも帰り際の感想は大半が
「あの飲み物お洒落だった〜」
とか
「あのデザート、使ってるものはなんてことないものなのにいつも食べてるのと全然違ったね」
で、調理は央二が担当やった。
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