文化祭出し物 等々力央二の場合


 三者面談なんて面倒くさいもんが終わって待ちに待った? 文化祭が近づいてきてなんだか学校中が浮き足立った雰囲気に包まれる頃、文化祭出し物決定のHRが開かれた。当然、俺もその浮き足立った一人。何て言っても売上最高のクラスに対する商品が楽しみやねん。どうせやるなら一番がいいし。だから、みんなのありきたりの喫茶店やたこ焼きやホストクラブの意見には大賛成。そやけどもう一捻りいるよな、思って

「他のとこと差つけるんに、‘和風’にしたら? 全部」

って言ってみた。みんなも何か足りへんって思ってたみたいでその意見はすぐ通って、委員長が全てに‘和風’って書き足してじゃあどれにする? てところで止まってしまってん。勝ちたいけどどれがうけるかわからんみたいな。時間はどんどん流れるし、話し合いは纏まらんし、これはちょっと大変やなぁなんてそれでもどこか暢気に構えながら煌紀の方見たら、こともあろうかぼぉっとしてるし。うん、ぼぉっとしてるとこも格好いいけどさ。あぁ、何これ。惚れた弱み? なんか、重傷? まぁ、それはいいわ。そんなことはこの際ちょっと横に置いといて…… なんて思った時、

「なぁ、なんで全部‘和風’やねん。 別に普通に喫茶とかたこ焼きやとかホストクラブでいんちゃうん? てか和風喫茶と和風ホストクラブとどう違うん?」

って…… おいおい、煌紀、わかってんのかよ。そう思ったんは俺だけやなかったみたいで、クラス中が煌紀に注目。俺も思わず、

「煌紀、お前聞いてなかったんかよ」

ってちょっと詰るような口調で言ってしまった。いやいやいや、誰だって言いたくなるやろ。煌紀、その‘央二のクセに……’的な目つきはやめんかい。俺が呆れてため息混じりに

「最高売上のとこに商品でるんは去年も一緒やったやろ」

と言えば

「あ?」

って、煌紀ほんまに忘れてたんかよ…… 脱力。

「で、七竹はどれが勝てると思う?」

 俺ががっくり肩を落としてる間に委員長がかなり気合い入れて煌紀に聞いた。思わず、と言ったかんじで委員長を睨みつける煌紀。びくっと肩を揺らしてる委員長がなんやとっても不憫な気がする。負けやんぞ! って睨み返す委員長やけど残念ながら貫禄負け。ふ、不憫や…… 可哀想になった俺は委員長の擁護にまわることにしてん。

「なあなあ、煌紀、堅気さんそんなんに見たらあかんで」

 にこっと笑いつつ煌紀をじとっと見たらバシッと殴られた。ぶちっ。

「痛いんじゃっっ」

 あああ、俺も短気や……

「はいはい、元気やね、央二くんは」

 煌紀のバカにしたあしらい方にキーッってなる俺。でもなんかちょっと寂しい。おまけにその後は篤郎と息ぴったりやし、二人して黒いし。なんか居るべくして隣におるって感じや。煌紀と篤郎は大人なんよな。考え方とか精神的に。それに比べて俺は子供。こうやってイベントごとにはみんなでわいわいできんの好きやし。

 やくざの息子やって色眼鏡で見られて嫌な思いすることもあるし、嫌われてんかなあって思うこともあるけどそれでもこうやってみんなで騒いでその中におれたら普通の高校生に成れてる気がする。だけどそれやったら煌紀と篤郎とはかけ離れてる。二人の間に大きな壁があるような気がする。俺が決して立ち入られへん大きな大きな壁が。



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