好みのタイプ *
部活が終わってレギュラー陣だけが残されたある日、
「四天宝寺中テニス部レギュラー諸君」
「何すか白石部長」
「どないしたん、白石」
「これ、見いや」
白石が俺らの目の前に紙を見せる。
「何やこれ、プロフィール?」
「そうや、新聞委員がな、テニス部レギュラーのこと書きたいらしいねん」
「おー面白そうやなあ」
「ワイも書きたいー」
「全員分貰うて来たからな、書きや。明日提出やからな、出来たら俺に頂戴や」
席に座って書き始める。
名前は、忍足謙也
好きな食べ物は、青汁、おでんのすじ肉
委員会は放送委員、
得意科目は英語、数学
苦手科目は世界史
……と。
どんどん書いていき、途中で手が止まる。
――好みのタイプは?
好みのタイプ。いやーそりゃあ無邪気な子とか
好きやけどなーでも、俺は今後輩の財前光と付き合っている。
財前が好きや。おん、めっちゃ好き。
この場合何て書けばええのかな?
クールで黒髪の人?無愛想、年下?
え、これって財前ってすぐ分かるやろ。
どないすればええの?
隣に座っている財前を見ると、珍しく真面目に空欄を埋めていた。
俺は真っ先に「好みのタイプは?」に目をやる。
好みのタイプは? 家庭的な女の子。
「え」
「何すか、謙也さん」
「おま、家庭的な、女の子て、」
「何見とんのですか」
「もう知らん!!」
俺は好みのタイプを空欄にして部室を走って出て行った。
何なん、あれ。
何の迷いもなく、家庭的な女の子て。
俺は、あんなに迷ったのに。
それに、俺は掃除も出来ひんし、料理だって出来ひん。
全然好みのタイプとちゃうやん。
▼