俺は、謙也さんのことが好きなのかもしれない。

そう気付いたのはあの胸の高鳴りから、すぐのことだった。

まだ、はっきりとは分からないけどきっと、好き。

多分、謙也さんなら信じられる。
だから好きになってもええですか?


「財前ーっ」


謙也さんが俺の教室に来る。
俺はそれだけで嬉しかった。
だけど、素直になれなくて。


「何すか」

「今日一緒に帰らへん?」

「ええですよ」

「なら、ちょっとだけ委員の用事であるから校門とこで待っててや」

「分かりましたわ」



俺は門に凭れてふと考えていた。


いつから…?

殴られたときに側に居てくれた時から?

いや、違う。多分会った時から。
もう既に惹かれていたんや。


謙也さんは俺のこと…?


分からへん、でも、多分俺は好きや。


男とか女とかやなくて
そんなん関係なくて
「謙也さん」が好きなんやと思う。



謙也さん、俺ちゃんと伝えますわ。
今すぐには無理やけど、これは俺が選んだ道やから。


その時だった。


俺は視界がぐるりと回転して地面に叩きつけられた。
その時目に映ったのは、あの先輩達やった。


「ぼーっと立ってて気づかんかったわー」

「ホンマにな」

なんて言ってケラケラ笑っていた。


そしてもう一つ視界に入ってきたものがあった。
それは目の前に近づいてきたトラックやった。

人間怖くなると動けなくなるんやな、と思った。
俺の体はビクともしない。

俺は死ぬんやな、嫌やな、
謙也さんと帰るのに…、目をギュッと閉じた。





その直後、バーンっと嫌な音が道に響いた。


けど、俺にはちゃんと意識があって。
どこも痛くなくて。

目を開くと俺の居た場所には謙也さんがいた。
辺り一面真っ赤で、俺は何が起きたか分からなかった。


「謙、也…さ、ん?」




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