あの日以来、謙也さんとは喋っていないし
部活の時などの行動も一緒にしていない。
ダブルスなんて息が合わなくて最悪やった。

俺は、謙也さんにあんな事を言って
置き去りにしてしまい、気まずかった。


「…はあ」

自分の周りが静かだと落ちつかない。
謙也さんが居るのが当たり前になっていた。


あの日から数日後、1人、屋上に居ると、
以前絡んできた先輩達が後ろに立っていた。


「おい」

「何すか」

また、ボコられるんかな、なんて考えていると
先輩達の言葉は予想外のものやった。

「お前、謙也とデキてるん?」

「はあ?」

「ほらな、やっぱり違うやろ」

「だよなー財前は女をとっかえひっかえなんやで」


俺は女と関わったことはほとんどない。
まあ、告られた事はあるけど全部断ってるし。

…それより、謙也さんとデキてるって何や。


「謙也さんとデキてるって何すか」

「最近、ずっと謙也とおったからお前はそういう趣味なんかなって」

「…意味分、からんすわ」

そういうと同時にまた1発殴られた。

「やっぱりお前、腹立つわ」

「おおきに。勝手に言ってろや」

もうどうにでもなれ、と思った。
もう1発先輩が俺を殴ろうとした時だった。


バンっ――。


「財前っ…!!」

謙也さんやった。


「…謙也さん?ッ」

「謙也…!?」

「お前ら、財前いじめて楽しいんか、いい加減にせえよ」

「っ…、チッ」

先輩達は手を下ろした走って屋上から去っていく。


「財前、大丈夫かっ?」

「謙也さん…」


謙也さんは無言で俺の頬に手を添える。

「…痛かったやろ」

「大丈夫っすわ、ちゅーか、何で」

「俺、財前のボディーガードになるって言うたやろ?」

「……」

謙也さんは当然のようにそう言い切った。
俺は言葉が出なかった。

「まあ、今回もちょお遅かったんやけど」

「…助かりましたわ」

俺は謙也さんの目を見て言った。

「…ぉ、おんっ!」

謙也さんは顔を赤くして嬉しそうに笑っていた。

「あと、この前はすみませんでした」

「この前?」

「誰も好きやない、って置き去りにしたやつっすわ」

「ええよ、ええよ、何も気にしてへん」

「そうっすか」

「なら、また今日からダブルス頑張ろうや」

「はい」

「なら、先生に呼ばれてるから、また後でな」


謙也さんが、屋上から出て行く。


…ドキ、ドキ。


俺は自分の胸が高鳴っていることに気づいていた。



「もしかして、俺って」



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