しばらくして、謙也さんと俺は一緒に行動するようになっていた。
ダブルスのペアであることが50%、
謙也さんが俺に付きまとってくるのが50%、という感じで。
「謙也さん」
「何や?」
「俺と一緒に居ったら、そのうち殴られますよ」
「そないなこと気にせんわー、そいつらやっつけよ」
「謙也さん弱そう」
「弱くあらへんよ、ちゅーか財前、最近ボコられてないよな?」
「まあ…、何か謙也さんが俺の周りにくるようになってから」
「引き続き、俺が財前のボディーガードしたるわ」
「キモイっすわ」
「でもあいつらきっと、財前がモテるからひがんでるんやで」
「はあ?俺モテへんっすわ」
「おま!知らんの?四天宝寺の天才は超美形って噂なんやで」
「…はあ。知らんわ」
「損やなー、財前のこと好きな女子たくさんいるで?」
そう言った謙也さんは何故か悲しそうに笑っていた。
俺もよう分からんけど、寂しい気持ちになった。
人は信じていなかった、信じられなかった。
もちろん、恋なんて考えたこともなかった。
「…俺は誰も好きやない」
「え?」
「…俺は誰も好きやないって言ってるんすわ!」
俺は自分でもワケが分からなくなって謙也さんを
置き去りにして走り去る。
何なん、この気持ち。
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